○○喫茶

 メイド喫茶というのがテレビやなんかで時々、取り上げられる。


 おそらく、話題になるほどには数は存在せず、世の99%以上の人は話には聞けども行ったことはないと思う。
 昔のノーパン喫茶なんかと同じではないか。知らんけど。


 ああいうのは、「メイド」と呼ぶから成り立つのであって、同じ職業の人であっても、


・女中喫茶


 では、何となくこぶ茶になるから、言葉というのは不思議である。


 さらには、


・家政婦喫茶


 だと、店に入った途端に「洗濯物は、出かける前に出しておいてください! こっちにも都合があるんですから! もう!」なんて怒られそうである。市原悦子に見られるのだろうか。


 メイド喫茶は、たぶん、男を客層としているのだろう。
 女が客層だとどうなるのか。


・下男喫茶
・下僕喫茶


 なのか。あまり受け入れられそうにない。さらに、


・奴僕喫茶


 となると、悲惨の度を増してくる。


チャタレイ夫人の恋人」に由来して、


・森番喫茶


 なんていうのは、なかなかワイルド&セクシーでいいかもしれない。


 まあ、たぶん、こういうのには漠然とした「きれいな物語」のイメージが必要なのだろう。だから、


執事喫茶


 は、まあまあ、行けるのではないか。


 イギリス風の執事が出てきて、「お嬢様、用意は調っております。こちらへ」なんて案内される。店内(屋敷内)には、わざとらしくロココ調のシャラシャラ音楽が鳴っている。
 少女漫画か何かからのイメージで、そういうのに惹かれそうな女性もいそうである。


 しかし、執事と同じく、使用人で、いろいろ采配をふるってくれるからといって、


・番頭喫茶


 となると、どうもいけない。


「あ、お帰りなさいやし。えー、これからあたくし、ちょっと番町のお得意のほうへ参りますが、万事、喜助に言いつけてありますので」
 なんて言われても、普通の人はどう対すればいいかわからないだろう。


 案外、


・新人社員喫茶


 なんてのはいいかもしれない。


「お疲れ様です! 外出、ご苦労様でした!」なんて、立ち上がって、大声で言う。
 席につくと、すっとお茶を持ってきたりして――って、これじゃ、普通の喫茶店とあんまり変わらないか。

                  • -


嘘四百二十七 世も末だが、平安時代からこのかた、ずっと世も末だ。