円楽引退

 少し前の話になるが、三遊亭円楽が引退を表明した。


 国立演芸場でひさしぶりに落語をやった後、記者会見して、「ろれつが回らない。噺のニュアンスが伝わらない」と引退の理由を語ったという。


 記者会見の模様は、ワイドショーやニュースで放送したのかもしれないが、わたしは見ていない。


「会見で円楽さんは、浅草生まれらしい歯切れのいい東京弁で『てんでろれつが回らねえ。これじゃあ、噺がナニしねえってんだ、この丸太ん棒っ!』と一気に引退の理由をまくしたてた」、なんてのなら面白いんだけど、どうやら、終始、真面目ムードだったらしい。残念だ。


 まあ、本人がやめたいと言ってるんだから、それでいいじゃないか、と思う。


 ただ、最後にやったのが、「芝浜」。人情噺の代表だ。
「芝浜」をやって、「こんな噺をお客様の前でやるのは情けない。これ以上、恥をかきたくない」と客の前からスッと身を引く。


 話がきれいだ。きれいすぎるくらいである。