ゴールキーパー

 子供の頃から一度も体験したことがないのだが、サッカーのゴールキーパー。あのポジションを選んだ人は何を喜びとしているのだろうか。


 いや、勝てばうれしい、というのはわかる。特に零封したら、「守りきったぜ!」とガッツポーズしたくなるだろう。


 その喜びを味わうために90分(延長なら120分)耐え続けるのだとしたら、ガキの頃から「我慢のできない子」と言われてきたわたしにはできそうもないし(まあ、それ以前に身体的なアレがあるのだけれども)、その気持ちを本当には理解できないように思う。


 だいたい、彼ら、やられっぱなしである。ひたすら打たれるばかりで、打ち返すということができない。
 ありゃあ、ほとんど、罰ゲームじゃないか、と、やったことのないわたしなんぞは思うのである(罰ゲームといえば、アイスホッケーのゴーリーはサッカーよりもっと悲惨に見える)。


 特にロベルト・カルロスフリーキックのボールなんて、全盛期には時速165キロ(!)あったそうで、あんな大きな球がそんなスピードで飛んできたら、恐怖だろう。
 かといって、「うわああ、勘弁してよお」とへっぴり腰になったら、ああいう世界では思いっ切り馬鹿にされ、以後、相手にされなくなりそうだから、少なくとも表向きは立ち向かう姿勢を見せなければならない。


 相手のシュートを止めたら、「けっ、ザマーミロ」と思うのかもしれない。
 しかし、そのザマーミロは受け身でしか味わえず、ディフェンダーのように自分から積極的にシュートを阻止に行くことは、ほとんどできない。


 ただただ、一方的に打たれては止める。打たれては止める。その繰り返しだ。でもって、ミスったら相手方は大喜び、味方からはブーイングを浴びる。損なポジションである。


 やられる役だから、と言って、別にマの字だゾの字だというわけではなかろう。
 シュートを打たれる度に、いやん、決められる度に、あふん、と身悶えするゴールキーパーがいたら、まわりが迷惑する。