乾燥ワカメの利用法

 一人暮らしを始めた男がやりがちな失敗に、乾燥ワカメをもどす、というのがある。


 もどすったって、口からワカメを吐きまくるわけではない。誰もそんなこと考えもしなかったろうが、一応、注意しておく。


 乾燥ワカメは、水を吸うと異常なほどに体積を増やす。だから、油断して、味噌汁や鍋物にわさっと入れると、もわもわ膨れあがって、一種、ホラー映画的様相を呈するのである。


 あのもわもわを何かに利用できないか、考えてみた。


 最初に思いついたのが、治安維持への利用である。いきなり凄いのが出てきたね、我ながら。


 近頃の日本では、機動隊が出動して、わーわー騒いでいる群衆を押さえつける、なんて光景はほとんど見られなくなった。平和ということであり、結構なことである。


 しかし、世界ではまだまだそういうことはよくあって、警察側がどうするかというと、放水が多いようだ。
 向かってくる群衆に消火用のホースで水をビャーッとかけるのである。


 あれは水圧がめちゃめちゃ強いようで、浴びるとまず前には進めないようだ。


 ただし、問題もある。やられた側の闘争心を煽ってしまうのだ。
「ちきしょー、何だコノヤロー!」とまあ、普段は火を消す道具が、闘争心の火を燃え上がらせてしまう。


 そこでお出ましいただくのが、乾燥ワカメだ。


 水圧は弱くてよい。ホースの先っぽに、乾燥ワカメを補充する装置をつける。
 でもって、水と一緒にワカメをどんどん噴射する。水を吸って膨れあがったワカメが、向かってくる相手にへちゃへちゃ、へちゃつく。


「うわっ。ぺぺぺ。何だ、こりゃ」
 と相手側は面食らうはずだ。ワカメだらけの情けないヤツが何を叫んでも、説得力はないだろう。


 第一、ヨードだかチンキだか知らないが、体にいい。