わたしと作文〜その4

 本は好きだったが書くほうに興味がなかった、というのは、音楽は聞くけれども演奏はやらない、というのと同じかもしれない。
 読むと書くは、別の話だ。


 初めて自分の意志で文章を書いたのは、社会人になってからである。
 ワープロを買って――ええと、若い人のために書いておくと、ワープロ・ソフトではなく、そういう機械があったのだ。思えば、短命な製品だった――あれこれ字を打ってみた。
 内容はほとんど反故のような、どうでもよいことだったろう。今と変わらない。


 書くことに目的があったわけではなく、ワープロを買ったので書いた、とまあ、本末転倒の話だ。「ついでに書く」というのは表現方面から見ると、あまり褒められたことではない。


 が、しかし、人間というのは、案外、そんなものではないか。
 デジカメを買ったから写真を撮ってみる。携帯を買い換えたからテレビを見てみる。ブログというものが流行っているようだから書いてみる。


 などというスルドい文明批評を、何となく成り行きでしてしまいつつ、この話、もうちょっとだけ続けます。

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘二百九十八 「品格」が流行語大賞に輝いたのは、一年後には誰もが忘れてしまいそうな話だからである。


▲一番上へ