品質管理

 対照的なのが、松下電器だ。


 以前、まだライター業をしていた頃、仕事で松下のデザイナーの話を聞く機会が割によくあった。


 彼らの嘆きは、製品の強度や耐久性に関する社内基準とテストが、異様に厳しいことだった。
 松下の社内では、品質管理を担当する部門はほとんど「神」なのだそうだ。


 カッチョいいデザイン(彼らはしばしば「ソニーみたいな」と表現した)を打ち出そうとしても、品質管理を担当する部門から、例えば、「ダメだ、こんな弱いヒンジは」と差し戻されるのである。
 製品の強度、耐久性を上げようとすれば、どうしても見た目が無骨になる。きれいな形にまとめるのは、難しい。


 しかし、それだけに松下の製品の信頼度は高い。それが、松下の、カッコいい悪いとは別のブランドイメージになっている。


 そんな話をよく聞いていたから、昨年だったか、石油暖房機の事故と回収騒ぎには驚いた。
 一方で、その後の偏執的なほどの回収努力は松下らしい、と思った。


 これは松下の人に話を聞いたわけではないけれども、あの事故、社内では千慮の一失という感があったのではないか。
 こういう騒ぎになると、企業文化がよく表れるものだ、と思う。


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「今日の嘘八百」


嘘二百六十二 道路工事のドリルの横で、ヘビメタの人々がヘッドバンギングしていた。