魅力の作り方

 では、そのソニーの魅力とは何だったかというと(もはや過去形にせざるをえないのだが)、大ざっぱにいって、人を驚かすこととデザインだったと思う。


 かつてのソニーは、「うわ、こんなこと考えたんだ」という製品を(たまに)出した。その驚きの印象がソニー製品全体の印象を引っ張っていた。


 もうひとつのポイントがデザインで、勝負どころとなる製品では、人がすでに馴染んでいるものを出すより、むしろ、ちょっと違和感を覚えさせることで、「新しい」という印象を生んでいたと思う。


 例えば、世の中に白黒のものが流行っていたら、あえてハデハデなカラーを打ち出す。ハデハデなカラーが流行っていたら渋く白黒に出る。あるいは、「何じゃ、こりゃ?」という形の製品を出す。
 そんなやり方で「ソニーは他と違う」というふうに感じさせていた(正しくは、場外ホームランもあれば、空振りもある、というところだったけれども。しかし、空振りを人はすぐ忘れてしまうものだ)。


 一方で、新しいテクノロジーを打ち出すのを急ぐせいか、デザイン重視のあまり華奢な作りになってしまうせいか、製品の品質管理は甘い。