野球には注意すべし

 イギリス起源とアメリカ起源の球技を比べると、アメリカ起源のほうがルールがややこしい。
 野球、アメフトはその最たるものだ。


 また、野球の三振、フォアボール、3アウト、アメフトの4thダウン、バレーボールの3タッチと、プレーの数を制限するのも、アメリカ起源の球技の特徴である。


 わたしの世代の場合、男ならごく小さい頃に野球のルールと戦術のあれこれを覚えた。だから、試合を見ると、今、どういう状況でどんな手があるか、すぐわかる。
 しかし、大人になって初めて野球の試合を見たら、何が起きているんだかさっぱりわからないだろう、と思う。


 若い頃、スポーツに興味のない女の子と野球の試合を見に行って、失敗したことがある。
 例えば、フォースアウトを説明しようとすると、えらくリクツを言わなければならない。


「あのね、今、バッターが打ったでしょ。打った人は一塁に行かなければいけないわけ。で、もともと一塁にいた人は、打った人が一塁に来るから、二塁に行かないといけない(ここで、「なんで二塁に行かないといけないの?」と訊かれたら、ちゃんと説明するか、テキトーに誤魔化すか、平手打ちするか、選択を迫られる)。で、守る側が二塁のベースを踏みながら――あ、ベースっていうのは、あの白くて四角いやつね――」
 こんなこと聞いていて、面白いわけがない。


 それに比べれば、イギリス起源のサッカー、テニスはシンプルだ。ルールをよく知らなくても、それなりに楽しめる。それなりに楽しめればルールを知ろうという気にもなるだろう。
 ラグビーも、細かいルールはいろいろあるけれども、球をつないでつないで、敵から逃げて、わーっとトライ、なんていうのを見るだけでも面白い。


 まあ、イギリス起源でもクリケットはかなりルールがややこしいらしいが、あれはイギリス人とインド人に勝手にやらせておきましょう。