左にいる雷神もまた、随分、無茶をしている。
例えば、右腕は後ろ上方に引いている。でもって、手のひらが上を向いている。
これまた、やってみると、「アタタタタ」、となる。
不可能な格好ではないが、なぜこんな無理なことをしているのか、理由がよくわからない。
両足も、何だか変にねじくれている。
人体の構造を克明に研究して絵を描いたレオナルド・ダビンチなら、「デタラメだ!」と怒り出すかもしれない。
わたしの見るところ、風神、雷神合わせて、おそらく、3〜6箇所は脱臼しているものと思われる。
宗達という人は、不思議な構図の絵を描く人で、例えば、こんな例がある。
ひとつひとつにツッコむのはやめておくが、例えば、松が「あ、こっち」、「は、そっち」、「あらら、おっとっと」などと、ヨッパラって、右往左往している様に笑ってしまう。
「松島図屏風」の松なぞ、水難事故の一歩手前である。
もちろん、日本画というのは「見たように描く」ものではないし、合理的なマナザシではつじつまが合わないものだらけだ。
しかし、宗達の絵には、さすがに当時の人も「これはどうしたことか」と感じたのではないか。
あくまで想像だが、宗達はそういう声が聞こえても、「ンなことはどうでもよいのだ」、フンッ! グイッ、グイッ、グイイイイッ。
そんなふうに豪腕で描いた人に思える。
例えば、「風神雷神図屏風」なら、「ここは、ふくらはぎを力いっぱい、見せるのだっ!」、グイッ、グイッ、グイイイイッ。
その、フンッ! グイイイイッの部分が、この人は面白そうだ。
変テコな描き方がいろいろ想像を広げるのも楽しい。機会があれば、もっといろいろ生で見てみたい。
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「今日の嘘八百」
嘘二百三十六 「昭和残侠伝」のラストで、不埒な敵を叩っ斬った健さんが、思わず「死んでもらいました」と言ってしまったことがある。