移動方法

 よくわからない、というか、知りたいのは、あの人達がどうやって目的地まで来るか、だ。


 テレビでは、たいてい、目的のビルに集団で入っていくところが映る。しからば、その前はどうしているのか。


 あの集団が、粛々として無言のまま地下鉄に乗るのだろうか。粛々と無言のままつり革に全員つかまって、粛々と無言のまま自動改札にパスネットを差すのか。


 たまたま同じ車両に乗り合わせたら、随分不気味だろう。


 全員クルマで行く、という手も考えられるが、駐車場所に困りそうだし、信号だ渋滞だで到着がバラケそうである。


 カルガモじゃあるまいし、まさか東京地検から目的地まで粛々と集団で歩いてくるわけでもあるまい。


 今、地図を見ると、東京地検から六本木ヒルズまで粛々と歩くのは結構、大変だ。


 落語の「黄金餅」でやると、霞が関の一丁目を出まして、あれから虎ノ門に出まして、愛宕山を右手に見ながら愛宕通りを抜けると、芝公園から芝の道成寺の手前の交差点を右に切れまして、飯倉の交差点をまっつぐに麻布台、ロシア大使館のお屋敷の前を通りまして、飯倉片町の交差点をまっつぐに六本木五丁目、首都高に当たってアマンドの角を左に切れまして、光専寺を右手に見ながら麻布警察の前を通りまして、六本木ヒルズに着いた頃には随分、みんな、くたびれた。


 観光バスをチャーターして出向くわけでもあるまい。


 バスのフロントガラスに「東京地検特捜部ご一行様」と書いてあって、バスガイドが「皆様、今日は東京観光をご利用いただきましてありがとうございます。運転手は佐藤一郎、バスガイドはわたくし、田中花子が務めさせていただきます〜」なんて、カラオケ大合唱付きで行くとも思えない。


 まさか、角から次々に人が出てきては合流していく、という大江戸捜査網方式でもなかろうし。


 まあ、しかし、無言で、粛々とカッコよくは見えるけれども、あれだけいれば、ウンコを我慢している人も、中にはいるのだろう。
 よく見ると、何人か、妙な汗をかいていたりして。


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「今日の嘘八百」


嘘五十五 武部幹事長、牛肉に飽きる。