欽ちゃんの衝撃

 わたしが持っているDVDは主に70年代にテレビで放送したものだ。


 それ以前の欽ちゃんは衝撃的に面白かったらしい。
 高田文夫がこう書いている(話の聞き取り原稿かもしれない)。


 ショックだったってみんな言うけど、欽ちゃんの出現というのは僕にとってもほんとにショックだったね、談志師匠と同じような意味で。
 例えば、トリオ・スカイラインの東さんのコントにしても、スタンドマイクがセンターにあって、それに対しての三人の芝居でしょ。テレビのフレームのなかの段取りで動いている。(中略)
 それが欽ちゃんはいきなりさ、フレームの外からダーッと駆け抜けてさ、いなくなっちゃうわけじゃないですか。バーッと走ってきてバーッと跳び蹴りしてさ。まあ、美しかったですね、かーっこよかったですよ。(中略)
 段取りで動いていないから、予定調和じゃないから、カメラが慌てて欽ちゃんを追っ掛けてるのが僕らにはわかる。あ、画面の向こうではすごいことが起きてる。世の中は大変なことが起きるんだなっていうショックを受けましたね。


(「江戸前で笑いたい」高田文夫編、中公文庫)


 小林信彦はこう書いている。


 コント55号をスターにしたのは、四十三年四月から始まった『お昼のゴールデン・ショー』(フジテレビ)であった。この番組は司会の前田武彦と、アシスタントの55号を人気の王座にのし上げた。つづいて夏から、同じ局で『コント55号の世界は笑う』が始まり、コンビの異常なおかしさは、みるみる風化してゆく。
(中略)
 コント55号の当るべからざる時代は、昭和四十三年、四十四年の二年間であった。


(「日本の喜劇人」小林信彦著、新潮文庫


 昭和四十三年、四十四年というと、わたしが1歳から2、3歳の頃で、さすがに覚えていない。
 この頃のコント55号をぜひ見てみたいものだ、と思うが、DVD化はされていないようだ。


 DVD化されている70年代前半のコント55号は、芸人として上昇する二郎さんと、マンネリで下降する欽ちゃん(体が二十代の頃ほど動かなくなったという理由もあるのかもしれない)なのだろう。


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「今日の嘘八百」


嘘二十七 取調室のカツ丼食いたさに犯行を重ねる犯人がいる。