最後の人々

首相「では、閣議を始める。ん? 揃っていないようだな」
官房長官総務大臣防衛庁長官は今、電話中です。宮内庁長官は相変わらずベッドから起きあがれません」
首相「あの爺さんも、もう90だからなあ。そのまま逝っても大往生だよ」
官房長官総務大臣文部科学大臣は授業中です」
経済産業大臣環境大臣「授業ったって、生徒は3人だろ。ここに連れてきて、横で教えていればいいのに」
官房長官総務大臣「なんでも、教育は聖職だ、などとおっしゃって」
経済産業大臣環境大臣「(笑)」
首相「農水大臣はどうした?」
官房長官総務大臣「田植えが忙しいので、今日は勘弁してくれ、とのことです」
首相「ふん。ま、仕方ないか。では、閣議を始める。まずは年金問題から」
厚生労働大臣「この閣議の後で、該当する方にお渡ししますので、私の部屋にいらしてください」
首相「以上、か」
財務大臣「あの、前々から申し上げている通り、なぜ年金だけ、今でも厚生労働省の管轄なのでしょうか」
厚生労働大臣「それは、年金は老後の問題だから、私のところで扱うのが当然……」
財務大臣「でも、これだけ人数が減ったんだから、お金は一括して私んところで見るのが合理的でしょ」
厚生労働大臣「合理的とか、そういう問題じゃないの。年金は老後の安定した生活のためのものであって」
財務大臣「だいたい、あなたに子どもができないから、少子化が進んでいるのよ」
厚生労働大臣「あ、今の問題発言。人権問題。生得的な個性から生ずる……」
法務大臣外務大臣「まあ、まあ。おふたりとも落ち着きなさい。少子化も、不妊の問題も、今に始まったことじゃないんだから」
経済産業大臣環境大臣「しかしなあ、子どもは5人でしょ。首相、どうするんです?」
首相「うん、まあ、省庁再編も視野には入れている」
経済産業大臣環境大臣「いや、そういうことじゃなくて。将来の首相は」
国土交通大臣財務大臣の子どもが3人、文部科学大臣のこどもが2人。困りましたね」
財務大臣「何も困ること、ないじゃないの。一番優秀なのを首相にすれば……」
経済産業大臣環境大臣「といっても、これだけ少ないとほとんど親族会議みたいなものだよな。もめるぜ、絶対。父親はそれぞれ違うし」
財務大臣「ちょっと。何が言いたいんです?!」
経済産業大臣環境大臣「いやいや。いっそ、ジャンケンにすれば? ま、おれに子どもはいないから、誰でもいいけどね――それとも、どう? 少子化対策に、4人目の子どもをさ、後でおれの部屋で」
財務大臣「(無視)」
法務大臣外務大臣「今のはセクハラにあたりますぞ」
首相「(経済産業大臣に)キミ、少しは口を慎みたまえ。ああ、それから忘れないうちに言っておくが、わしの部屋が雨漏りしておる。国土交通大臣、後で見といてくれんかね」
国土交通大臣「了解しました」
防衛庁長官が走って入ってくる)
防衛庁長官「米軍からの情報ではK国が不穏な動きを見せているとのこと」
法務大臣外務大臣「ついに来たか」
首相「で、在日米軍は?」
防衛庁長官海兵隊が福岡を中心に展開。陸軍第1軍団が能登半島佐渡島に移動中とのこと。また、第5空軍敦賀第7艦隊と連絡をとり、いつでも出撃可能だそうです」
首相「そうか。まずは睨み合いだな」
経済産業大臣環境大臣「しっかし、在日米軍サマサマだね。今、何人いるの? 5万人? ということは、日本人ひとりあたり……んーと」
財務大臣「約3,100人です」
経済産業大臣環境大臣「さすが、計算が早いね。出納だけのことはある」
財務大臣「(ムッとする)」
法務大臣外務大臣「米軍には思いやり予算を毎月2千円出しておりますからな。頑張ってもらわんと」
文部科学大臣が入ってくる)
首相「どうした? 授業中じゃなかったのか」
文部科学大臣「今、宮内庁長官が亡くなりました」
首相「そうか。また、日本人が減ったな」
官房長官総務大臣「では、戸籍の事務がありますので、私はこれで」


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