幽霊

 亡き志ん朝によれば、昔の江戸っ子のように、気は短いけど、さっぱりしている人種はあんまり幽霊にならないそうで、なるほど、そうかもしれない。


「あ、斬られちゃった。しゃあねえな」
 とっとと諦めてしまう。この世に気が残らないから、幽霊にはならないのだ。


 わたしは、勝負はさっさとついたほうがよい、と思っているので、たぶん、このタイプに近いと思う。
 なんなら、今日あたり、斬っちゃってもらっても構わない。


 幽霊という存在は(仮に実在しないなら)、人に強い恨みを残して死ぬと、あの世へ行く気になれないだろう、この世に残って仇につきまとったり、気だけがさまよったりするだろう、と、昔の人が、おそらく、考えたのだと思う。


 どケチで金を貯め込む人をガリガリ亡者、と呼ぶ。亡者というのは、幽霊とほぼ同じだ。金への執念のもの凄さを、幽霊にたとえたのだろう。
 では、ガリガリ亡者が死んじゃったら、どうなるのか。金への執着を捨てきれず、幽霊になって、銀行のATMの前にでも立っているのだろうか。


 凄まじいんだか、間抜けなんだか、よくわからない。


 よく知らないが、陽気な人も幽霊にはなりにくいと思う。
「ありゃ、死んじゃった。アハ。しょうがないね。アハハ。死に神でも来て言うのかね。『お前は死んだのだ。もう、この世にはいなくなってしまった。ユー、0(れい)だ』なんちて。アハ。アハ。アハハハ。アハハハハハハ」
 まあ、これでは陽気な死人というより、ネジの飛んでっちゃった死人という感じだが。


 しかし、どうも、今日は散漫だね。まあ、思いつくことを手当たり次第に書いているのだから、仕方がない。諦めてください。