龍一の世界〜初めに

 えー、どうも、こんにちは。


 今日は「世界のサカモト、日吉のイナモト」と評される、わたくし、稲本龍一がご家庭でも手軽に楽しめる龍一サウンドの作り方について、ご案内したいと思います。


 みなさんのPCに音楽制作ソフトは入っていますか。Macintoshなら、GarageBandというソフトが最初からバンドルされていると思います。
 Windowsのほうはよく存じませんが、最近はさほど高価でなくとも、そこそこの機能を備えたソフトがあるようです。


 では、順を追って説明して参りますが、まず大切なことをひとつ申し上げておきましょう。


ポイント1 真心を込めて作らない。


 これでございます。
 変に真心を込めると、龍一サウンドならではのスカした感じが出ません。


 真心を込めた音楽は、とりあえず、夏川りみさんに任せておけば大丈夫です。素人が下手に真心を込めると、得てしてまわりが、結婚式で長ーいスピーチを聞かされるような、困った心持ちになります。


 次のポイントは、もっと実践的なものです。


ポイント2 キーボードの白鍵だけを使う。


 白鍵というのは、キーボードのここの部分ですね。



白鍵


 もちろん、音楽に熟達した方なら黒鍵を使ってもいいのですが、慣れないうちは白鍵だけにしておきましょう。そのほうが手早く音楽を作れます。
 わたくしの言う通りにやっていけば、白鍵だけでも十分に龍一サウンドを仕立てることができます。

龍一の世界〜下ごしらえ

 まずは下ごしらえです。


 ポピュラー系の音楽には「ベース」と言って、たいてい、低く鳴る音が入ります。曲を下支えする、ま、家でいえば基礎工事のようなものですね。


 龍一サウンドでは次のことが非常に重要です。龍一サウンドの秘密の半分はここにあると言っても過言ではございません。


ポイント3 ベースは、8分音符で同じ音をひたすら刻む。


 実際に聞いてみましょう。


龍一サウンド - ベース


 このように、均等なリズム、同じ音量で押すわけです。音と音の間隔を均等にする、音量を揃える、というのは音楽ソフトの得意とするところですので、マニュアルを見て、やってみてください。


 どの音にするかは問題ではありません。とりあえず、白鍵のどれかをテキトーに押しておいてください。


 音色は今回は、「ストリングス」を選びました。オーケストラっぽい感じがして、でも、均等に刻むところがクラシックっぽくなくて、その「意外でスカした感じ」がいかにも龍一風になります。


 次にリズムですが、今回、わたしはこういうのを選んでみました。


龍一サウンド - リズム


 たいていの音楽ソフトにはいろんなリズムが用意されています。その中から無機質な感じのものを選んでください。


 阿波踊りサルサのような陽気なものはなるべく避けてください。メキシコ人がギター弾きながら「アミーゴ!」などと言い出しそうなものも、やめときましょう。ポルカは絶対にいけません。


 ただ、あまり迷う必要はありません。機械っぽい感じのものを何となく選んでおけば、最後にはちゃんとそれなりに仕上がります。

龍一の世界〜コード、メロディ

 さあ、いよいよお楽しみ、上のほうのサウンドです。


 メインのメロディはピアノで作りましょう。ここでポイントです。


ポイント4 鍵盤は指3本で押す。指と指の間は鍵盤を2つ空ける。


 図で説明しましょう。よくある和音はこういうものです。



ドミソ〜指の間は1つ


 学校の音楽の授業で習ったかもしれませんね。ドミソ。指と指の間に鍵盤は1つしか空いていません。


 そうではなくて、こういう押さえ方をします。



指の間は2つ


 指と指の間に鍵盤が2つ空いていますね。これをすると、龍一サウンド独特の、わかったようなわからないような曲調を実現できます。


 この押さえ方で、鍵盤の白鍵をテキトーにポーン、ポン、ポンと上下しましょう。


 例えば、こんな感じです。


龍一サウンド - ピアノ


 弾く前にどんな音が出るかなんて、考えなくても結構です。「白鍵」「指と指の間は2つ」だけ守って、テキトーに押しとけばいいのです。
 間違って、隣の鍵盤を一緒に押してしまっても、PCなら後で消せるから大丈夫です。


 少しピアノが生々しいですね。そういうときは今のピアノと同じ音をシンセで重ねましょう。
 実際に演奏する必要はなく(下手に演奏しようとすると、まず間違いなく失敗します)、シンセサイザーの音のゾーンにコピー&ペーストすればOKです。


 こんなふうになりました。さっきのピアノだけの音と聞き比べてみてください。


龍一サウンド - ピアノ+シンセ


 このとき、シンセサイザーの音のほうは音量を抑えめにしましょう。シンセサイザーは、あくまでちょっとした味付け。メインはピアノです。


 まだちょっと寂しいですね。


 シンセで別のメロディを入れてみましょう。
 例によって、どんなメロディにするかなんて考えないで結構です。とにかく、白鍵をテキトーに押しましょう。


 わたくしの場合は、こんなふうになりました。


龍一サウンド - シンセを追加

龍一の世界〜仕上げ

 これでほぼ完成しました。


 仕上げとして、効果音を追加しましょう。
 音楽ソフトにいろいろ効果音が入っていると思います。それを、料理の最後にパセリをぱらりとふりかけるような感じで入れましょう。


 わたくしのお勧めは「外国人が何か喋っている声」です。曲がぐっと意味ありげになります。


 ハイ、完成しました。聴いてみてください。


龍一サウンド - 完成


 まあ、さほどの出来でもありませんが、龍一サウンドのわかったようなわからないような、「おれ、レベル高いもんねー」という雰囲気は出せたんじゃないかと思います。


 なお、ここまで作るのに、わたくしの場合は正味、35分ほどでした。会社の昼休みやなんかに、弁当を買ってきて食べながらでも作れるので、ぜひお試しください。


 それから、PCに音楽ソフトの入っていない方。
 そういう方は、友達を誘って、ふたりでピアノを弾きましょう。


 低音部の担当の人は、白鍵を八分音符で「ダダダダダダダダ」とひたすら刻む。
 高音部の担当の人は、白鍵を、さっきの「指3本。指と指の間は鍵盤2つ」でテキトーに上下してください。


 結構、暇をつぶせます。腕にホワイトバンドをして弾くのも、カッコよくていいですね。


 では、また!

龍一の世界〜おまけ

 勢いでもう一曲作ってみた。やり口はほぼ同じである。今度は制作時間、30分を切った。


龍一サウンド - 二曲目


 こっちのほうがちょっとポップかな。

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「今日の嘘八百」


嘘四百四十三 中高年が道徳を説くのは、道徳をうるさく言われる年代から自分が抜け出したからである。