昨日書いた都はるみの「惚れちゃったんだヨ」を、作曲家はどうやって作ったんだろうか。
歌い出しの「ホ〜、惚れ〜ちゃったんだヨ〜」のメロディはピアノでは表現しにくいし、五線譜に書くのはもっと難しい。
まあ、歌詞とメロディを合わせて「歌」として作り、都はるみには口づてで歌い方を伝え、ピアノや五線譜はせいぜい補助の道具として使った、というところだろうけれども。
我々は――といっしょくたにしたいのだけれども、ここは慎重にわたしは、小学校以来、クラシックの流れにある西洋音楽的な教育を受けてきた。
その結果、音楽の構成を理屈というか、頭でっかちというか、五線譜に分解して考えるクセのようなものがついている。
きちんとした調律に基づく音程と、それから4分割、3分割で刻むリズムを基本に音を捉えてしまうのだ。
五線譜的な音の捉え方というのは、おそらく、音楽の歴史において画期的だった。
1オクターブを12音階に分解し、リズムを4分、8分、12分、あるいは3連符など整数で分解する。それに基づいて、西洋音楽のノウハウを音楽理論という形で体系化できた。
五線譜的な音の捉え方は、おそらく、数学における整数や直線、点などの発見に当たると思う。数学が、整数や点、直線などの仮定(自然界には本当の意味での点、直線は存在しないだろう)を基礎に発展したように、西洋音楽は音階と音符という仮定を基礎に発展できた。
しかし、五線譜的な音の捉え方には弊害もあると思う。
五線譜的な知識、理屈が先に立って音楽を聞いてしまい、五線譜的な捉え方からかけ離れた音楽を、素直に聴けなくしてしまうのだ。
ジャズ・ピアニストの山下洋輔と、邦楽囃子方でパーカッショニストの仙波清彦の対談に、邦楽における笛の話が出てくる。
山下 昔から笛は調子が合っているべきものだったとは限らない。
仙波 昔はいいかげんだったと思いますよ。
山下 合っていたらかえってつまらないという考えかな。
仙波 名人だと、調子は外れていても、めちゃくちゃいいムードになったり。
山下 そうか、名人だから良いわけで、そうでない人がはずれると、やはりいけないとか(笑)。笛の音程は、結局は大した問題ではないということかな。
仙波 大した問題ではないんでしょうね、きっと。
(中略)
仙波 芸大時代に、小学校の音楽の先生方が来て、邦楽の演奏を聞いた後、何かご質問がありますかと聞いたら、「その笛はチューニングが合っていないのですか」と(笑)。
山下 西洋音楽的にはそう思いますよね。でも、それは合っているもいないもないわけで。
仙波 ええ、そういうものなんです。
(「音楽(秘)講座」の「邦楽もジャズである」より)
そもそも、今は邦楽を聞く機会が少ないから「チューニングが合っていない」と感じてもしょうがないのかもしれない。
しかし、一方で、五線譜的な捉え方を無意識にしてしまって、さまざまな音楽のよさを随分と聞き逃している可能性もあると思う。
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