おざなりとなおざり

 日本語を学ぶ外国人が最初にぶつかる壁に、「おざなり」と「なおざり」の違いがある。ないか。


 まあ、まぎらわしい。
 わたしも、油断すると、どっちがどっちだかわからなくなる。


 広辞苑で「おざなり」を引くと、こうあった。


おざ-なり【御座なり】当座をつくろうこと。その場のがれにいいかげんに物事をするさま。「―の計画」「―にする」「―を言う」


 思わず我が身をふり返って、反省してしまう説明である。


「御座なり」だから、座って、いいかげんにあしらう様から来たのだろうか。「御」の字がついているということは、結構偉い人だったのかもしれない。


「なおざり」はこう。


なおざりナホザリ【等閑】1.あまり注意を払わないさま。いい加減にするさま。かりそめ。おろそか。ゆるがせ。源若菜下「―のすさびと初めより心をとどめぬ人だに」。「規則を―にする」「―な態度」2.あっさりしていること。徒然草「よき人は…興ずるさまも―なり」


 これまた反省してしまう。


 どちらも誠意がないという点では共通するが、対象に向かう姿勢が微妙に違うようである。


「おざなり」は、一応相手のほうを向いてそれらしく振る舞ってはいるが、内心はテキトーであるらしい。
 モナリザの微笑を使って表現すると、こういうことだと思う。



オザナリの微笑


「なおざり」は心が他に向いているらしい。



ナオザリの微笑


 モナリザといえば、「謎の微笑」として有名だが、では、あの微笑はどちらなのだろう。



おざなりの微笑なのか、なおざりの微笑なのか?


 おざなりと思って見てみるとおざなりにも思えるし、なおざりと思って見てみるとなおざりにも思える。さすが、謎の微笑である。


 関係ないが、思いつきで「モナリザの爆笑」という画像を作ってみようと思ったのですが、能力不足でできませんでした。