おれは自転車で徘徊するのが趣味で、東京中のあちこちをまわる。
走っていてよく出くわすのがラーメン屋に並んでいる人々である。おれはあんまりラーメンを食わないし、そもそも並ぶのが嫌いだから、「昔のソ連で肉買おうっていうんじゃないからさー」などと内心、悪口を言っている。自分がやらないことには手厳しくなりがちなもので、いや、面目ない。
いろんな食べ物屋があるなかで、並ぶ店ナンバーワンはラーメン屋だろう。寿司屋に並んでいるというのは見たことがないし(回転寿司は別)、ラーメン屋ではなくて普通の中華料理屋に並んでいるのもあまり見たことがない。マクドナルドはやたらと並んでいて、ハンバーガーをほとんど食べないおれからするとあれも不思議だ。
ラーメン屋は客の回転が早いから、並んでも割に早く順番がまわってくるということもあるのだろう(マクドナルドも同じ)。しかし、同じように回転が早いカレー屋に並んでいる列というのはあまり見た記憶がなく、ラーメン屋にはカレー屋とは違う、並びたくなる、あるいは並んでも不愉快ではない何かがあるんだろうか。
あと並ぶといえばなんだろう。ケーキ屋や鯛焼き屋の類は並んでいるのを見る気がする。あとは肉料理系か。そう考えると、どうも味の濃ゆい系のものには人を並ばせる力があるのかもしれない。粋な蕎麦屋に人が並んでいる、なんていうのはあんまり見たことがないものな。