濃厚について

 最近、といってもここ十年くらいのスパンの話かもしれないが、ラーメン屋で「濃厚」を売りにする店が増えた気がする。「濃厚」「コク」「こってり」「脂コテコテ」・・・・・・。

 まあ、あくまでおれの好みの話なんだが、どうもこう、ギトギトしたふうを想像して、よろしくない。時には文字づらを見ただけでゲンナリしてくる。

 悪口モードに入って申し訳ないが、第一、粋じゃない。たとえば、助六がラーメンを食うところを想像してご覧。果たして濃厚スープをごくごく飲んだりするかね。おれはきっと、さっぱり醤油味、あるいはいっそ塩スープをすっと飲むと思う。粋というのはそこはかとなく色気を感じさせるところによさがあるが、「濃厚」は身も蓋もないというか、そのものそのまんまというか、ま、グラビアアイドルみたいなものである。

 まあ、そもそもラーメンを粋で語れるのかどうかよくわからぬが、何だろう、あの「濃厚」をヨシとする風潮は。わかりやすい味がウケるようになってきたということだろうか。いっそ、ラードでも食ってろ、と思う。

(我ながら論旨がメチャメチャである。理不尽である)

(これは貴婦人である)

 ・・・・・・ところで、今思ったけど、助六って本当に粋なのだろうか、あのいで立ち。いささかこれ見よがしな紅の襦袢に高下駄、三重丸の傘、紫の鉢巻。実はただの“もの凄く派手な頭痛持ちの人”なんじゃなかろうか。