矛盾するアドバイス

 ごく短期間のうちに無名からスターダムにのし上がる人というのがいて、俳優やミュージシャンにはそういうケースが多いが、その他のジャンルにもいる。ここ数年では、勝間和代さんが典型的な例ではないかと思う。最初、お金の運用指南をする人かと思っていたら、あれよあれよというまに有名となり、経済評論や生き方の部分でまで活発に意見を述べるようになっていった。波に乗るというのはああいうことを言うのだろう。

 今朝の朝日新聞の別冊に、勝間和代さんのコラムが載っていた。「自分の最良のコーチは自分である」というタイトルだ。

 内容をかいつまんで語ると、若い頃はいろんな人のアドバイスを素直に聞いていたが、うまくいくばかりではなかった。あるとき、自分自身がコーチになって目標設定をして、他人からのアドバイスを取捨選択するのが一番だと気づいた、という話である。

 こんなことを書いている。

 他人の意見がどんなに優れていても、それはあくまで参考意見にすぎず、どう活用するかはすべて、自分で考えてコントロールしていかなければなりません。
 どこかに優れたコーチがいて私を導いてくれるはずだ、という思い込みを捨てさえすれば、私たちの成長のスピードは格段に高まります。

 なるほど、そうだよな、と思う。……のだが、このアドバイスに素直に従うと、「自分で決めろ」という意見に流されることになり、矛盾しまう。といって、「いーえ、そんなアドバイスは聞きません、聞こえません」と拒否してしまうなら、それもまた、「他人のアドバイスには素直に従うべし」という結論になって、矛盾してしまう。

 なかなかに難しい。ま、勝間和代さんの意見もあくまで参考に、ということなのだろう。しかし、そうすると、「お金は銀行に預けるな」という強力なアドバイスもあくまでご参考まで、ということになるのでしょうか。