ピタゴラスの定理の通用しない宇宙

 いきなりのSF思考になってしまうが、この宇宙はさまざまな法則によって成り立っていて、法則と法則の間に矛盾はない、とされている。正確に言うと、まだ矛盾は発見されていない。例えば、数学の無謬性というらしいが、正しく展開された数学の定理と定理が矛盾することはない、少なくとも矛盾は見つかっていないようである。どうやら、我々は法則がきれいに組み合わさった宇宙に住んでいるらしい。

 一方で、この世界は神、あるいは創造主が創り上げたという説がある。

 ここに多重世界なる考え方を取り入れてみる。我々が住んでいるこの宇宙以外にも、並行して別の宇宙が存在するのだ、という考え方で、SF好きにはなじみ深いアイデアである。別宇宙に住んでいる稲本喜則なる人物は、行き届いた人物であるやもしれぬ。

 さて、では、多重世界があるとして、例えば、ピタゴラスの定理三平方の定理)が成り立たない宇宙というのもありえるのだろうか。つまり、

平面幾何学において直角三角形の斜辺の長さを c とし、その他の辺の長さを a, b としたとき、


a2 + b2 = c2


であるという命題は偽である。

 と証明されてしまう宇宙である。神様が「ピタゴラスの定理はダメ。ナシ。ここの宇宙ではマチガイ」と決めてしまった宇宙である。

 この宇宙に住むわしらには考えにくいことだが、それは“この”宇宙の法則のありように縛られてしまっているからかもしれない。

 よくわからんが、そのピタゴラスの定理が間違っている宇宙では、(あくまでわしらの尺度では)いろいろなものが“いがんで”いるのやもしれぬ。