女子プロ・ボクシングの最軽量級をアトム級と呼ぶのだそうで、日本語にするなら「原子級」。随分とまた、小さく出たものである。
次にもっと小さい階級を作るときは、「ニュートリノ級」になるのだろうか。もはやスーパカミオカンデでも使わなければ観測できない。
ただし、アトム級というのはWBC(世界ボクシング評議会)の最軽量級で、WIBA(女子国際ボクシング協会)ではミニマム級、IFBA(国際女子ボクサー協会)ではストロー級が最軽量級だという。
ストロー級というのも日本語にすると「藁級」で、これまたえらく軽い。
以前から、ボクシングの階級名は、体重の軽いほうを小バカにする傾向があるなあ、と思っている。
WBA(世界ボクシング協会)とWBCの男子プロ・ボクシングの階級は、重い順に、以下の通り。
ヘビー級
クルーザー級
ライトヘビー級
スーパーミドル級
ミドル級
スーパーウェルター級
ウェルター級
スーパーライト級
ライト級
スーパーフェザー級
フェザー級
スーパーバンタム級
バンタム級
スーパーフライ級
フライ級
ライトフライ級
ミニマム級(ストロー級、ミニフライ級)
場末の島国に住むワシらは、文明開化以来の刷り込みというか、英語を見ると「洗練されている」「カッコいい」と感じてしまう性癖があるが(シットですらカッコいいのだ)、同じ言葉を、英語ネイティブの人々はどう感じているのだろうか、というのは、常々、興味のあるところである。
「ライト級」(軽量級)より下は、日本語にするとほとんどギャグなんではないか、とすら思う。
「フェザー級」は「羽根級」である。名前だけ見ると、あまりまともに扱われていない感じを受ける。
「スーパーフェザー級チャンピオン」というと、何かカッコいい響きがあるが、日本語にすると、「羽根超級王者」だ。
バンタムというのは、チャボ。鶏のチャボ。
かつて「黄金のバンタム」と呼ばれた選手がいたが、「黄金のチャボ」である。
「スーパーフライ級」は、アメリカ黒人のスラングで「カッ飛び超級」だとよかったのだが、残念ながら、「蠅超級」である。「揚げ物超級」ではない。
英語圏の選手は、世界タイトル戦に勝利して、「イエー! オレ様が蠅級チャンピオンだぜ!」と素直に喜べるのだろうか。
羽根、チャボ、蠅、藁、(女子では)原子、と、軽い階級をコケにするような感覚が、ボクシングの階級名は面白い。
もしかすると、近代ボクシング発祥の地であり、一番強い男を決める殴り合いとしての歴史を持つイギリスやアメリカでは、ボクシングとは“ガタイのいい男と男が正々堂々と殴り合うスポーツである”という観念があるのかもしれない。知らんけど。