盗んだバイクで

 尾崎某の「十五の夜」に、


♪盗んだバイクで走り出す〜


 という歌詞がある。
 いかにも青春の暴走、という感じだ。「ン〜、青春しちょるねえ〜」と、わたしなんぞこれだけで三合はイケる。


 こういうのはやっぱり、バイクでなくっちゃいけない。
 例えば、


♪盗んだ軽トラで走り出す〜


 では今イチだし、たまたまそれが野菜の直販のクルマで、荷台にキャベツが積んであったりすると致命的だ。


 同じトラックでも、


♪盗んだデコトラで走り出す〜


 となると、暴走が豪快すぎる。ある意味、ポジティブですらある。


 かといって、


♪盗んだベンツで走り出す〜


 というのも、何だか嫌な感じがする。


 なぜバイクだとハマるのだろう。外の空気に全身を晒しているからだろうか。
 確かに、


♪盗んだ自転車で走り出す〜


 でも、バイクよりだいぶ疾走感は落ちるが、「もやもやしてんだろうなー」というふうは残る。一合くらいならイケる。


 ま、しかし、外の空気に全身を晒すといっても、


♪盗んだ一輪車で走り出す〜


 というのは、どうもいけない。愉快すぎる。


 さらには、


♪盗んだ大八車と走り出す〜


 となると、もはや何をしたいのかわからない。


 あるいは、こっちのほうが、青春がだいぶ暴走しているんではないか。

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「今日の嘘八百」


嘘四百四十四 加山雄三と尾崎某の「新旧・青春対談」という幻の企画があったらしい。