わたしと作文〜その6

 転職して、専門誌の編集部に入ったのだが、文章の書き方について編集部の誰かに教わったことはない。


 全体に惰性の香り漂う編集部で、生意気な言いようだが、シロートのわたしからしても、そんなに文章の上手い人はいなかった。


 ただ、自分で取材して書く機会は多く、それは役に立ったと思う。


 初めて記事を一本任されたときは、張り切ったものだ。
 今思えば、半日もかからないような文章なのだが、当時はテニヲハもいい加減な頃だから、何日も使った。匍匐前進するような書きようだったのではないか。


 書いては読み返し、直しては読み返し、デザイナーに渡してからも読み返し、「あ、ここ直したい」となって直し、デザイナーに「そういうことは渡す前にやってくれ」と怒られ、それでも未練がましく読み返しては直した。


 何度も読み返したのは、「自分の書いた文章」というものに対する自己愛のせいだったのだろう。


 ただ、読み返しては直す、というのは、文章の稽古としては正解だ。少なくともわたしは、それ以外に、わかりやすい文章を書くための上達法を知らない。