コケコケ

 タイトルは、別にニワトリと化したわけではない。


 子供の頃からやたらとよくコケる。


 ガキの時分は、しょっちゅう、ドブにはまっていた。
 階段を昇れば最初の段に蹴つまづくし、下りれば最後にぐにゅっと床にのめり込む(まだ階段が続いていると勘違いするのである)。


 小学1年か2年のとき、登校途中でコケたことがある。
 ちょうど倒れた先に大きな石があった。前頭部をしたたか打ちつけ、手をやると、ヌルヌルした。見ると、手がどす黒い赤色に染まっている。


 血をダラダラ流しながら、泣いて家に帰った。
 親も、今、学校に行ったと思った息子が血だるまで戻ってきて、さぞや驚いたことだろう。


 このときの傷は今でも残っている。
 あのとき、頭を打たなければ、今頃、もっとマトモな人間でいられたのかもしれないと思うと、無念である。


 他にも、頭を打つことはよくあった。打った直後の、ジーンと頭の芯が痺れる感覚は、わたしにとって、もはや懐かしいものですらある。