くじ

「もし宝くじに当たったら、どうするか?」なんていう話題が、よくある。


 そこらは今も昔も変わらないようで、落語の「宿屋の富」や「富久」では、富くじの札をつく(抽選をする)神社で、有象無象(うぞうむぞう)が当たったらどうする、という話題で盛り上がる。


 庭に池をこしらえて、酒で満たして飛び込む、なんていう酒豪のカエルみたいなやつもいれば、自分で質屋を始めるなんてやつもいる(質屋が遠くて不便なのだそうだ)。


 吉原から馴染みの女を身請けする、というのもいる。
 こぎれいな家を買って、女と差し向かい。ごちそうを前に差しつ差されつ、いい気持ちで寝てしまい、ふっと目が覚めたら、「あら、起きたの。お風呂でも行っといでよ」、「おう」。帰ってきたら、すっかり膳の支度ができている。ごちそうを前に差しつ差されつ、いい気持ちで寝てしまい、ふっと目が覚めたら、「あら、起きたの。お風呂でも行っといでよ」、「おう」。帰ってきたら、すっかり膳の支度ができている。ごちそうを前に差しつ差されつ、いい気持ちで寝てしまい、ふっと目が覚めたら……なんていう夢を語る。身請けの永劫回帰だ。


「当たんなかったら、どうすんの?」
「うどん食って寝ちまう」


 いざ札をつく段になると、ここが女を身請けするかうどん食って寝るかの分かれ道、なんて手合いばかりだから、人の気で札が動いたそうである。