ぶっ壊す

自民党をぶっ壊す」
 と小泉首相が最初に言ったのは何年前だったか。
 就任当時だったと記憶しているから、もう、4、5年になるかもしれない。


 えーと、政治談義をやるつもりはないよ。そもそも、そんな力はわたしにない。


自民党をぶっ壊す」
 というのは、当時としても穏当な言葉ではなかったろうが、さりとて、さほど危ない言葉にも聞こえなかった。
 むしろ、景気よくていいじゃないですか。行っちゃいますか、行っちゃいますか、という感覚も、イッパンタイシューの中にはあったと思う。


 しかし、あれが、
「戸越銀座をぶっ壊す」
 という発言だと、大変、危険なふうに聞こえるのはなぜだろうか。


 自民党は組織で、戸越銀座は地名だ。土地をぶっ壊す、というと、ハンマーやら発破やらで、物理的に壊してしまうように聞こえるからかもしれない。


 しかし、組織であっても、こういうのは尋常でなく響く。


「若葉町三丁目町内会をぶっ壊す」


 政党はひとつくらい壊しても、どうせまた生えてくる(キノコだね、まるで)けれども、若葉町三丁目町内会はひとつしかなく、換えがきかないからか。
 どうやら、若葉町三丁目町内会は、自民党以上にかけがえのない存在のようだ。意外な発見であった。


 戸越銀座と同じく地名であっても、
「永田町をぶっ壊す」
 は、さほど危険に響かない。
 おそらく、ここで「ぶっ壊す」と言っているのは、土地・建物としての永田町ではなく、永田町が象徴する、密談だの、菓子折だの、根回しだの、「勉強会」だの、料亭政治だの、まずはおひとつ・いやいやオットットだの、実はここだけの話なんだがねだの、だからであろう。


 一方、土地・建物ではなく、町内会でもなく、象徴でもなく、現に存在する組織で政党であるのに、
社民党をぶっ壊す」
 という言い方が、まるで相手にされないか、哀れを誘うのもまた、なかなか興味深いことである。


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