飛ぶ姿

 ヒーローはよく空を飛ぶ。


 スーパーマンしかり、鉄腕アトムしかり、ウルトラマンしかり、サイボーグ009しかり。


 まあ、飛ぶのはかまわないが、ほとんど全てのヒーローがうつぶせの姿勢で飛ぶのは、なぜだろうか。
 たまには仰向けに飛ぶやつがいたっていいと思うのだが。


 地上の様子をチェックしているから、というのはたぶん、間違いだろう。
 スーパーマン鉄腕アトムは、まあ、そういうときもあるかもしれないが、ほとんどの場合、ヒーロー達は前を見ている。飛行機と正面衝突したら危ないし。


 だったら、別に仰向けの姿勢で、顔を正面に向けたっていいではないか、と思うのだ。夜なら、時々、空のお星様を楽しめるのも、いい。


 やってみるとわかるが、うつぶせの状態で顎を支えずに顔だけ立てた姿勢でいるのは、結構疲れる。首の後ろ側の筋肉をずっと緊張させていないといけない。
 それよりは仰向けで、首をだらんとさせたほうが、重力の助けがある分、楽チンだ。


 なお、さっき、ベッドで実際に両方の姿勢を試してみた。仰向けになって首を下げるほうが楽だった。
 同時に、「おれは何をやっているのだろう?」という疑問にとらわれた。


 まあ、そんなことはどうでもよい。


 腕を前に突き出すヒーローが多いのも、あらためて考えると、不思議だ。なぜだろう。


「空気抵抗を少なくするため」なんて、エセ科学的解説はいらないよ。なぜなら、人体の形状をしたもの(に似たもの)が空を飛ぶというだけで、十分、非科学的だからだ。


 あえてエセ科学的に行くなら、腕を突き出した状態で手を合わせるべきだと思う。本当に抵抗を減らしたいのならば。
 背泳ぎのバサロを思い浮かべていただきたい。


 どうせ飛べるんだし、科学なんぞロングキックでゴールラインの遥か彼方まで蹴飛ばしてしまったんだから、もっといろんな格好をしたっていいと思うのだ。
 腕組みして飛ぶとか、気をつけの姿勢で直立して飛ぶとか、小さい前ならいしながら飛ぶとか、180度開脚して飛ぶとか(下から見上げている人々は、何となく困ると思うけど)。


 あるいは、頬杖をついたり、ぐうたら親父の昼酒みたいに、横向きになって頭を手で支えて飛ぶのもいい。


 空中で頭を支えられるのか、なんて気にしなくたっていい。
 繰り返すが、飛ぶというだけですでに理屈に唾しているし、だいたい、ヒーローが登場するということ自体が、ぶっちぎって変な状態だからだ。


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