「閑古鳥(かんこどり)が鳴く」なんていう言い方がある。
あの閑古鳥というのはどういう鳥なんだと調べてみたら、カッコウのことなんだそうだ。広辞苑には、「(カッコウドリの訛か)」と書いてあった。
どうやら、昔の人はカッコウの鳴く声を物寂しく感じて(例によって、あはれ、あはれ、と、やたらあはれていたのだろう)、そこから商売のはやらないことを「閑古鳥が鳴く」と言うようになったらしい。
「閑古鳥」というのは、当て字だそうだ。
閑古鳥が鳴く、といえば、昔のパ・リーグの試合は、実によく鳴いていた。
どんなに客が少なくとも、観衆は5,000人と発表された。新聞に観衆が5,000人と書いてあれば、すなわち、それ以下であることを意味した。
オリオンズが本拠にしていた川崎球場や仙台市民球場なんてひどいもので、広くて安くて都合がいい、と、外野席で勝手に結婚式を挙げるやつらがいたくらいである。
それに比べれば、今のパ・リーグは、随分、客が増えたものだ、と思う。それでも1リーグだなんだとなるのは、選手の年俸と親会社の事情のせいなんだろう。
友達が昔、寄席の昼の部に行ったら、客が自分を含めてふたりしかいなかったそうだ。
ほとんど面談である。見る方も辛いが、演る方も辛いだろう。
紙切りの芸人さんなんて、ふたりの注文を交互に聞いて、切らなければならない。客は、隅田川の屋形船だなんだを、大量に持ち帰ることになる。
別の友達が二十代の頃、何人かで伊豆のストリップ劇場に行った。
最初は他の客もいた。ところが、後ろの席に座っていたら、その客達が全員帰ってしまった。
踊り子(本物の伊豆の踊り子だ)のオネエサンもやりにくかったのだろう、「あんた達、そんなとこに座ってないで、一番前に来なさいよ!」と命令した。
友達らはまだ若かったこともあって、気圧され、おとなしく一番前の席に移動した。
ああいうものは、いろんな客に向けて、分散してサービスするから、いい。目の前でみっちりやられると、相当、キツいそうだ。
そのうち、オネエサンもヤケになったのか、「もう、いいから、ステージに上がってきなさい」と言い出した。
といっても、警察からお叱りを受けるナントカ・ショーの類ではない。しょうがないので、ステージにあぐらをかいて鑑賞させていただき、花電車のお手伝いをして、帰ってきたそうだ。
閑古鳥が鳴くと、演る方も見る方も、キビしい。しかし、何やら、おかしみというか、妙な味わいもあるような気がする。
少なくとも、メンバーが登場したら、自動的に立ち上がって盛り上がったフリをするライブなんかより、よっぽど面白い。