ジョージ・クリントン・ファッション・ショー


 ズビーン。


 総帥ジョージ・クリントン率いるファンク集団パーラメントのアルバム「マザーシップ・コネクション」(1976)のジャケットである。


 パーラメントは70年代後半から80年代初頭にかけて活躍したファンク・バンド。その後のヒップホップのサウンドに多大な影響を与えたとされる。


 ファンクというのは、んー、音楽のスタイルなので言葉では説明しにくいが、アメリカの下町黒人の体臭がしみついたような濃ゆい音楽である。同じパターンを延々繰り返して高揚していくのが特徴だ。60年代後半以降のジェームス・ブラウンがわかりやすい例かもしれない。


 パーラメントの音楽は究極のファンクというか、モツ煮込み的ブニブニ・サウンドで、好きな人間にはたまらんものがあるが、必ずしも万人にオススメはできない。
 日本の、サラサラ・ヘア的爽やかソングを聴いて(わたしも嫌いではないが)、「もうちょっと、頑張ってみようか」などと思わず勇気づけられている人がファンクを聴くと、気持ち悪くなってくるかもしれない。


 さて、ここで扱いたいのはパーラメントの音楽ではなく、アルバム・ジャケットである。総帥ジョージ・クリントンのファションが、実にもってたまらんのである。


 冒頭に掲げた「マザーシップ・コネクション」のジャケットは、ジョージ・クリントン扮する、ファンクの救世主スター・チャイルドが地球へと降臨するシーンである。


 パーラメントの一連のアルバムは、ファンク・ミュージックを宇宙から抹殺しようとたくらむ怪人サー・ノーズ・ドゥヴォイド・オヴ・ファンクと、それに立ち向かう正義のファンク戦士スター・チャイルドおよび偉大なファンクの科学者ドクター・ファンケンシュタインの戦いを描くという、壮大なような、局地的なような、よくわからんストーリーに基づいている。


 拡大して、見てみよう。



 見てくれ、この弾ける笑顔。この喜びよう。


 裏ジャケットを見てみよう。



 宇宙からやってきたスター・チャイルドはゲットーに降り立ったらしい。
 チープな合成写真が泣かせる。もちろん、ジョージ・クリントン的には、これで全然オッケーなのだ。



いい笑顔。ファンクの救世主スター・チャイルドは意外と気さくな人物らしい。



このブーツのセンス。赤い手袋。腕時計型機器のチープさが、またたまらん。


 一隊全体どうやったらこんなコスチュームを考え出し、調達できるのであろうか。


 次のアルバム「ザ・クローンズ・オブ・ドクター・ファンケンシュタイン」(1976)のジャケットにジョージ・クリントンは登場しない。



……タイトルと扮装からして、たぶん、ドクター・ファンケンシュタインの作ったクローンの人々なのだろう。


 ジョージ・クリントンはドクター・ファンケンシュタインに扮して、裏ジャケットに登場する。




この世にファンクを広めるため、日夜、研究に励むドクター・ファンケンシュタインことジョージ・クリントン先生。


 その次のスタジオ録音アルバム「ファンケンテレキーVSプラシーボ・シンドローム」(1977)のジャケットは、一見、前の2枚のアルバムよりおとなしめに見える。



 メンバーの集合写真かな? と思うが、ジョージ・クリントンの着想をなめてはいけない。CDのブロシュアを広げて見てみよう。



 このアルバムは、サー・ノーズ・ドゥヴォイド・オヴ・ファンクが作った、人々をファンキー(元々は臭い、という意味だが、ファンク・ミュージック好き、あるいはファンク独特のセンスを持つ、というような意味)でなくしてしまう脅威の武器スヌーズ・ガンに対抗して、ドクター・ファンケンシュタインがスター・チャイルドに人々をファンキーにする武器バップ・ガンを持たせて戦わせる、というストーリーである(らしい)。


 このジャケット、実は続き絵になっている。細かに見てみる。



バップ・ガン、発射! ビヨヨ〜ン



う。当たっちゃった。



何か、脱ぎたくなってきたぞ。



ヤー。



もっと脱いじゃえ。



イエイ! ノリノリだぜ。おれって、超ファンキー。


 実に持ってたまらん。


 長くなってしまった。続きは明日書きます(たぶん)。


マザーシップ・コネクション

マザーシップ・コネクション

Clones of Dr Funkenstein

Clones of Dr Funkenstein

ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム

ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム