言葉の中には、磁力の強いものがあるように思う。
人を引きつけたり、反発させたりする。
君が代は、歌詞だけとってみれば何ということもない。王や帝を寿ぐ歌というのは、別に日本に限らないだろう。
また、歌ったからといって、その歌に非常に影響を受けるほど、人間は単純なものでもなかろうと思う。
例えば、英国国歌の「God Save the Queen」をイギリスの子ども達が歌って、熱狂的な王家崇拝者になる、という話は、寡聞にして聞いたことがないし、「矢切の渡し」をカラオケで歌って、そこにいた異性と(別に同性でもかまわぬが)そのまま逐電したという話も聞いたことがない。
まあ、君が代の場合は、 歌の内容とは別に、人によっていろいろな印象を抱いてしまっていて、しかも、こじれればこじれるほど、その印象を自分で強めてしまうのだろう。
今では、「心の自由」などというもの凄いところにまで話が行ってしまい、ちょっと手に負えない感じだ。
固有名詞に磁力の強い言葉があるのは、当然か。
一般名詞にも、もちろん、ある。
最近だと、「品格」なんていうのがそうかもしれない。まあ、簡単に己を高めたような気持ちになれて、あるいは簡単に人を見下すことができて、便利なのだろう。
「格差」は、一時に比べれば、磁力が弱まってきたかな。
「売国」というのも、磁力が強い。よく知らないが、特に戦前は相当、強かったらしい。
今でも時折見かけるが、嫌な言葉である。
何しろ、磁力が強いから――というより、電磁波を放ってしまうから、人の理性の働きを止め、感情をやたらと刺激する。しかも、話をそこで終わらせてしまうから、困ったものである。
後は何だろう。「先進」、「イノベーション」、「未来的」なんていうのも、人によっては磁力が働くのかな。
底の浅い感じがして、わたしはあまり好きではない。
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「今日の嘘八百」
嘘七百二 上野のアメ横で排出権を売っていました。