ブッダ

 とても尊いのに、なぜか笑いを呼ぶ方がいらっしゃる。


 ブッダ


 が、そのお方だ。


 漢字で「仏陀」と書くとそうでもないのだが、カタカナになると、妙に可笑しい。


 例えば、英国が仏教国になったとする。
 サッカーのイングランド代表の試合前、スタジアムにこんな歌が響くのだ。


 ブッダ・セイヴ・ザ・クィーン


 ブッダが女王をお護りになる、というわけで、発想としては護国の加持祈祷にやや似ている。


 それはともかく、この、そこはかとない可笑しさは何だろうか。
 ブッダは立派な方なのに。


 あるいは、30代以上の人でないとわからないかもしれないが、かつて水谷豊主演のTVドラマに「熱中時代」というのがあった。
 最初のシリーズでは、水谷豊が教師をやり、続編では刑事になった。


 これにも、ブッダにご登場いただこう。


 熱中時代〜ブッダ


 テレビドラマとしては抹香くさすぎるかもしれない。
 内容は、ひたすら修行である。途中から悟ってしまう。


 ところで、ブッダというと、どういう顔立ちを思い浮かべるだろうか。


 広義のブッダは、たくさんいらっしゃるらしい。しかし、ここではザ・ブッダ・オブ・ザ・ブッダ、お釈迦様に限ろう。


 私は手塚治虫の「ブッダ」の影響のせいか、奈良の大仏様のような顔を思い浮かべる。パンチパーマに福々しいお顔である。


 あのお顔がヒーロー物に導入されると、なかなかキビしいことになる。たとえば、


 仮面ライダーブッダ


 というのは、マニアにはたまらないものがあるかもしれないが(何のマニアかはよくわからぬが)、ガキどもには不評だろう。


 悪の組織によって、悲劇の主人公とゴータマ・シッダルタが合体した改造人間だ。
「変身! トオーッ」とジャンプすると、あの仮面ライダーのコスチューム。しかし、顔だけ、盧舎那仏なのだ。


 そんなやつにバイクに乗ってそこらへんを走り回られたら、何となく、困る気がする。
 尊いお方なのに。


 しかも、このお方の必殺技は、「説諭」である。悪の組織の怪人どもに、例え話をふんだんに入れた法話をして、改悛させてしまうのだ。とことん、地味である。


 仮面ライダーが出てきたからには、やはり、こういうものも出てくる。


 ウルトラマンブッダ


 街が怪獣に襲われ、主人公のナントカ隊員が変身する。


 怪獣の前に、後光とともにどーんと現れるのは、結跏趺坐した巨大なブッダである。目は、あの、開いているような閉じているような、半眼。怪獣も、とまどうだろう。


 呆気にとられ、一瞬、動きを止めた怪獣に、ブッダの額のホクロから光線がピーッと発射されて、あっという間に一件落着。


 地球の平和を守ったブッダは、怪獣の成仏を祈りつつ、飛んでいくのだ。
 半眼の、結跏趺坐の姿勢のままで。


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