過剰な人

 同病相憐れむ、というのだろうか、同じ悩みを持っている人には同情の気持ちが湧きやすい。
 例えば、頭痛持ちには、頭痛のせいでやる気の起こらない人の気持ちがよくわかる。


 逆に、あまり自分が体験したことのない悩みだと、多少の想像はできても、なかなか本当に理解するのは難しい。
「甘えてるだけ」などと、ひどく冷淡になる場合もある。


 私は今のところ、髪の毛は普通にある。
 だから、ハゲている人や髪が薄くなっている人の悩み、ジタバタする感覚を、多少は想像できても、実感するところまではいかない。


 今日、取り上げたいのは、このページだ。同様の宣伝が週刊誌にも載っていた。


地肌が見えなくなったんです!


 この「インディアン伝承シャンプー」とやらを薦めたいわけではない。


 文章の内容をかいつまんで書くと、この武川誠一さんという人がある大雨の日に会社に戻った。みんなの視線を感じたので鏡を見ると、髪がべたっと張り付いて、地肌が見えていた。「インディアン伝承シャンプー」を使ったら、髪が太くなって、地肌が見えなくなった、とそういう話だ。


 私は、人のハゲをネタに笑いをとるような、安っぽいことはしたいわけではない。
 武川誠一さんのこの言葉に注意を引かれたのだ。


もう心配で心配で、人と会うこともイヤになりストレスがたまり悪循環。抜け毛は、増え続け仕事どころではなくなり、真剣に会社を辞めようと思いましたね。


 繰り返すが、私には髪が薄くなっている人の悩みがどれほどのものか、(まだ?)わからない。
 しかし、抜け毛のせいで仕事どころではなくなる、というのは、どうなのか。
 ちょっと社会人として問題があるのではなかろうか?


 いや、それはちょっと言い過ぎか。
 しかし、私が武川誠一さんの会社の人事担当で、会社の業績が芳しくなかったら、武川誠一さんをリストラの候補として、△印くらいはつけておくと思う。


 そう思って、一番上の写真を見ると、横に「ツラかった日々を思い出されて目に…」と書いてある。
 どうやら、武川誠一さんはひどい花粉症というわけではなく、抜け毛で悩んでいた頃のことを思い出して、涙されたようである。


 抜け毛でねえ。そこまで。よほど、感情の激しやすい人なのだろうか。


 あらためて文章を読み直すと、最初のほうにこんな文章がある。


ビショビショになってオフィスに戻ると・・・みんなが私の頭を見てる!


 どうも、相当、のんきな会社のようである。


 先ほどの人事担当云々は撤回する。
 適材適所、はちょっと違うな、えーと、同じ穴のムジナ、でもないし、割れ鍋に閉じ蓋、もズレているか。まあ、何となく、言わんとすることはわかるでしょう?


 文章と写真を見る限り、どうも、武川誠一さんは全体的に過剰な人のようである。


 この文章が実話なのか創作なのか誇張なのかは、知らない。
 が、武川誠一さんの過剰さは面白かった。少なくとも宣伝への注意を引いたから、宣伝としての第一関門はクリアしていると思う。


 武川誠一さんの話を読んで、「インディアン伝承シャンプー」を買う人がどれだけいるのかは知らんけど。


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