少し前にアメリカのディープステートについて論じた本を読んだ。
その本によると、アメリカにはディープステートと呼ばれる裏の政府があって、国際金融資本=ユダヤ系金融資本によって操られており、トランプはディープステートと戦っている偉大な大統領なのだそうだ。ディープステートはメディアも操っているので、報道されることはない。歴史をさかのぼるとケネディ大統領の暗殺も、リンカーン大統領の暗殺も、ソ連の成立も、ウクライナ戦争も、コロナ禍も、全て国際金融資本=ユダヤ系金融資本が黒幕だという。
馬鹿馬鹿しい陰謀論で、紹介するほどの本でもないので書名などは書かない。
しかし、アマゾンのレビュー欄を読むと異常に評価が高く、「よくぞ書いてくれた」「知らなかった」「目が覚めた」などと称賛する声が多い。こんな馬鹿馬鹿しい本に、とちょっとショックを受けた。
こんなレビューがあった。
これらの事実に対して「陰謀論」とレッテルを貼るのは、無知なのか自分の常識が否定されるのが恐ろしいのか何か都合が悪くなるのか。
ディープステートやら黒幕の存在やらを信じ込んでしまうと、馬鹿馬鹿しいと考える者は陰謀の一端にからんでいるのだ、と思い込んでしまうらしい。下手なもじりで申し訳ないが、信じる者は救われない。
この手の陰謀論を簡単に信じ込んでしまう人が多いのはショックだし、不思議だ。単にうぶなのか。複雑な世の中を単純な図式で割り切ってくれるとすっきりするのか。それとも人が知らない秘密を自分が知ったことに快感を覚えるのか。影の何々、みたいな話にロマンを覚えるのだろうか。
ボブ・ウッドワードの「恐怖の男」を読むと、トランプ政権の内情というか、トランプという人の出鱈目さは大変なものである。
しかし、ディープステートなるものを信じ込んだ人がこの本を読むと、「ボブ・ウッドワードもディープステートに操られているのだ」と考えてしまうのかもしれない。