個人差はあるだろうが、全般的な傾向として、年をとるにしたがって新しいものに飛びつく気持ちというのが薄れていくように思う。
ガキの時分には、新しいスタイルの音楽だとか、ファッションだとか、あるいはシソーみたいなものにドキドキしたりワクワクしたりしがちだが、年をとると慣れ親しんだものでほぼ十分、たまに新しいものに惹かれてもガキの時分ほどのめりこみはしないし、興味が長くは続かない。
こういう変化は何によるのだろうか。細胞の代謝が弱まって、物質の交換が若い頃ほどはスピーディに行われないというような生物的な変化がまわりまわって、新しいものへの興味の弱まり(腰が重い、面倒くさい)につながるのだろうか。あるいは経験がたまることで容易には新奇なものに衝き動かされなくなるのか。
年をとっても新しいものに心躍らせる人は、「若いですね」とか、「少年の心を持っている」とか、しばしば持ち上げられる。悔し紛れに言うわけではないが、しかし、そういう言い方というのは、常に新しいものを開拓して売りつけようとする資本主義的な物の見方が影響しているようにも思う。いいヨ別に、新しいからったってそもそもいらないヨ、とジジイのおれは思うのである。
じゃあ、年とって心が動かなくなるかというとそうでもなくて、慣れ親しんでいるものがつくづくいいなあ、などと思ったりもする。時にはちょっとした発見がありもする。面白くもある。それで十分なのである。盆栽心のようなものが育っていくともいえる。
いや、別に新しいものにワクワクする人をけなしているわけではない。それはそれでよい。しかし、新奇なものに飛びつかないからといって、馬鹿にされる筋合いもないと思うだけのことである。
いいじゃないか、年をとったんだから年をとったなりの心持ちになったって。