Twitterとクラ

 Twitterでは、自分のフォローしている人たちの記したメモを見ることができる。メモも情報の一種だから、Twitterは巨大な情報交換の場と捉えることも可能だ。では、その「情報の内容」(=メモ)自体に価値があるのかというと、必ずしもそうではない。たとえば、わたしが「ラーメンを食った」とメモを書いたとして、それを見た人たちにとって「稲本という馬鹿(ではあるが物凄い美男子)がラーメンを食った」という内容にどれほどの価値があるかというと、ほとんど価値はないだろう。Twitterでは、情報の内容もさることながら、ネットワークを作り、そのネットワークを通じて情報を「交換」する行為自体により大きな価値(=面白さ)があるようだ。

 このネットワーク作りは、パプア・ニューギニアで行われる「クラ」という交易に似ているように思う。

 わたしは大学時代に文化人類学のコースにいた。「学んだ」とはいえず、「いた」としか言いようがないのだが、それでもいくらか覚えていることもある。文化人類学の学生は初期の頃に古典的研究として、パプア・ニューギニアのトロブリアンド諸島などで行われる「クラ」という交易について学ぶ。

 クラでは、男達がカヌーで何百キロも海を渡り、赤い貝で作った首飾り(ソクラヴァ)と、白い貝で作った腕輪(ムワリ)を交換する。交換するといってもその場で物々交換するわけではなくて、首飾りをもらった人は後で腕輪をその人に返し、腕輪をもらった人は逆に後で首飾りを返さなければいけない、という決まりになっている。首飾りも腕輪も、ある島の人から別の島の人へと渡されていくので、全体で見れば島々の間をぐるぐるぐるぐる回っていく。首飾りは交易圏内の島々を時計回りに渡され、腕輪は反時計回りに渡されていく。

 たとえば、首飾りが

A島 ⇒ B島 ⇒ C島 ⇒ A島・・・

 と渡されていくとすると、腕輪は

C島 ⇒ B島 ⇒ A島 ⇒ C島・・・

 と渡されていくわけだ。

 詳しくは、Wikipediaを読むといいですね*1

→ クラ (交易) - Wikipedia

 首飾りも腕輪もたくさんあり、それぞれの島の中にはクラの交換を行うための複数の男達の集団がある。男達は時に何百キロもカヌーに乗り、決められた島(A島の人はB島へ、B島の人はC島へ、など)に首飾りまたは腕輪を運ぶ。そうして、クラを通じて何百キロも離れた島々の人々の間にネットワークが形成される。

*1:白状すると上の説明もWikipediaを参照した。馬鹿学生だったので、あまりよく覚えていなかったのだ。