ゼーカー

 風邪を引いた。


 ちょっと気温が下がると、律儀に風邪を引く。まるで人間寒暖計である。


 1年の3分の1は風邪を引いている気がする。
 そもそも、わたしは摂氏20度〜25度の間でしか生存できず、飼育の難しい熱帯魚みたいなものである。


 もっとも、症状は大したことなく、現に、こうして日記を書いている(本当は、暗黒舞踏のごとき鬼気迫る表情で書いているのだが。そんなことはおくびにも出さないのが、わたしの偉いところである)。


 頭が少々、ぼーっとしているが、まあ、これは風邪を引いていないときもそうだ。
 やる気が起きないのも普段からそうで、変わりはない。ナマコが風邪を引くとこんな具合かもしれない。


 しかし、やたらと鼻水が出るのには閉口する。
 鼻が壊れた蛇口のようになって、鼻水が出続ける。泉のごとしである。


 ティッシュペーパーを当てているのだが、すぐにぐじょぐじょになる。
 紙が尽きたら、鼻水垂らしながらコンビニに行かねばの娘だ。恐怖の鼻水垂れ流し男と化して外を歩かなければならない。運命の時はゆっくりと、しかし確実に近づいている。


 こう鼻水が出続けると、やがては脱水症状を起こすのだろうか。
 死因は、鼻水による脱水症状。何とも、ナサケない最期である。


 2、3日したら、部屋で鼻水の海の中に倒れながら、シワシワの物体と化していたりして。


 そうして、誰か発見者が「大丈夫ですか?!」と抱き起こすと、鼻から最後の鼻水が、ピューッ。


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「今日の嘘八百」


嘘二百四十五 今、全快しました。