年齢

 おそらく、出身大学を知りたがる人に似て、あまりいい癖(へき)ではないのだろうが、つい人の年齢を知りたくなってしまう。


 いや、自分でも理由はよくわからないのだが、直接会う人の年齢を知りたいとは思わない。知っても、ふーん、程度だ。


 ところが、活躍している人や、何か印象的なことを言う人を、活字やテレビで見聞きすると、「この人、いくつなんだろう?」と思うのだ。
 もしかしたら、自分に、何者かになりたい、という気持ちがあるからかもしれない。


 私は1966年生まれで、今、38歳だ。同年生まれにマイク・タイソンと、先日、ちらりと書いたザスパ草津のGK小島伸幸がいる。学年なら三浦知良が同じ(生まれ年はカズがひとつ下)。清原和博中山雅史はひとつ下だ。


 まあ、スポーツ選手というのは豆腐と同じで足が早い。あ、これ、文字通りの意味ではなくて、早く参ってしまう、という意味よ。
 だから、私の年で大ベテランになるのは仕方がない。


 私は、自分でも笑ってしまうくらい、スポーツが苦手で、パンチを繰り出せば、蝶のようにか弱く、蜂のようにブンブンブン。サッカーをやれば、グラウンダーのボールしか蹴れず、しかも、コロコロとかわゆく転がる(キティちゃんシュート、と自分では呼んでいる)。バッティングすれば、ボールではなく、バットがピッチャーめがけて飛んでいく(そして、3メートル先で失速する)。バスケットをやれば、ドリブルの最初のバウンドが顔面を直撃。眼鏡には蜘蛛の巣状にヒビが入り、鼻血がたらりと垂れる。
 もう、ここまで来ると、歩いているというだけで自分で自分に拍手喝采したくなる。


 そんなわけで、上記の人々と自分を引き比べようという気持ちはあまりないと思う。
 ただ、彼らが、私とほぼ同じ時間の中で出会ってきた、数々の濃い体験に思いを馳せることはある。


 先日の欧州チャンピオンズリーグバルセロナを破ったチェルシーモウリーニョ監督は、私より3歳上。昨年、ポルトガルFCポルトチャンピオンズリーグ優勝を果たしているから、私より2歳上でヨーロッパを制した計算になる。


 一方のバルセロナライカールト監督は4歳上だ。ユーロ2000でオランダ代表を率いていたから、今の私の年で代表監督を務めていたわけだ。


 もうそんな人々の出てくる年になったのかと思う。


 山田風太郎の「人間臨終図巻」で、「三十八歳で死んだ人々」の項を見ると、マリー・アントワネットメンデルスゾーン大杉栄岸田劉生市川雷蔵、なんていう名前が挙がっている。ヒュー。


 ついでに「八十八歳」で死んだ人々の項を見ると、宮武外骨志賀直哉蒋介石チャップリン市川房枝
 あと、半世紀もある。それはそれで、困ったような気になる。