外国語の習得

 外国語の習得をする一番の早道は、ネイティブの異性と同棲することだという説がある(別に同性でもかまわぬが)。

 なるほど、そうやもしれぬ。残念ながら、わたしはそういう機会に恵まれたことがないので、実証はできないが。

 ただし、こと日本語に関する限り、習得の一番の早道は同棲ではない。「相撲部屋に入る」。これであろう。

 外国人力士のインタビューを聞くと、彼らが日本語を上手く話す、しかもニュアンスをきちんとわきまえて話すのに感心する。スピード出世した入門数年目の力士でもかなり上手い。

 もっとも、個人差もあるようで、日馬富士なんかはインタビューの質問がよくわからないと、「一日一番」と言ってごまかしているようにも見える。把瑠都も何言ってんだかわからないことがよくあるけれども、たぶん、あの青年はエストニア語で話してもあんなふうなんではないか。いや、知らんけど。

 これから日本語を習得しようという外国の若人には、だから、まず相撲部屋に入門することをお勧めしたい。

 なぜ外国人力士の日本語習得が早いかというと、やはり集団生活で揉まれるからだろう。力士は、十両に上がるまで部屋の全員で大部屋暮らしである。そこは、汗と体臭とちゃんこの世界。まわりから言葉を教わるというのもあるが、必要に駆られて話さざるを得ないというのが大きいのだと思う。

 彼らは、おそらく大して文法を習っていないと思う。下一段活用とか、修飾/被修飾なんていう言葉は、おそらく、日常生活の中で出てこないだろう。それでも話せるようになる。

 一方で、日本の学校で英語を習うときは、文法をしこまれる。なるほど、文法はシステマティックだ。しかし、何がシステマティックかというと、実は一人の教師が何十人もの生徒をまとめて教えられるという点が一番システマティックなのであって、つまりは一種の大量生産方式だと思う(わたしも含めて、不良品が多い)。

 日本人が集団生活を送りながら英語を学ぶとしたらどんな方法が考えられるだろうか。

 米軍にでも入るか。採ってくれるかどうかは心許ないが。

 後は刑務所か。英語が話せるようになったとしても、いろいろと不都合が多いかもしれない。