わたしはあまり宇宙に興味がないほうなんだが(古今亭志ん生によれば、飛行機というのは、あれはなんか人間が錯覚しているのだそうである。その伝でいえば、ロケットなんぞ大錯覚であろう)、それでも土井さんがスペースシャトルに乗っていって、上のほうで何かやっているらしいことくらいは知っている。
土井さん。
誰だ?
ニュースには、例えば、こういう見出しが出る。
土井さん、「きぼう」保管室内の作業順調
保管室はうまいこと行ってるらしい。事情はわからないが、まあ、結構なことである。
で、その保管室にいる土井さんて、誰なんだ?
普通、ニュースというのは肩書きをつけるものなのだが、なぜか宇宙に行くと、みんな「さん」付けになってしまうのである。毛利さん、向井さん、土井さん。
で、あなた達はどこの誰なんだ?
これはどういうことなのだろう。職のない人というわけではあるまい。また、仕事とは関係なく、「趣味」で宇宙に飛んでったわけでもあるまい。
他に肩書きがつかない人といえば、ノーベル賞を取った田中さんが思い浮かぶ。
あの人の場合はサラリーマンのうえ、博士号を持たなかったので、マスコミが呼び方に困ったのだと思う。
受賞当時は、島津製作所で係長だったそうで、
田中係長、ノーベル化学賞受賞
では、オモシロ・ニュースに見えてしまう、ということだったのかもしれない。
犯罪者、あるいは容疑者は、基本的に呼び捨てにされる。
山田さん、一家惨殺
鈴木さん、銀行強盗
などという見出しが、新聞の紙面に躍ることはない。
あの困った教祖の人を宇宙に送ったら、どうなるのだろう。
松本さん、保管室内の作業順調
という見出しになるのだろうか。
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「今日の嘘八百」
嘘六百八十九 JAXAでは、「きぼう」が成功したら、もっと凄い実験棟「だつぼう」を送るという。