可能性を考える

 守屋前防衛事務次官、見るからに悪役という風貌で、素敵だ。
 ただ、喋ると、意外とボソボソした口調なのが残念である。もっとドスを利かせるといいのだが、難しいなら、黙っていたほうがいいと思う。
 ともあれ、絵になる人物だ。


 マスコミは、この間までボクシング一家をバッシングしていたかと思ったら、今度は守屋氏である。
 その前は安倍総理で(世の大半の人が忘れかけているのではないか)、そのさらに前だと朝青龍だろうか。何しろ、いろいろバッシングが多くて、間に何人か忘れているかもしれない。


 敵の砲撃が脇にそれて、赤福は一息ついているそうです。


 守屋氏は悪いやつ、という印象を強めたい作為もあるようで、新聞では、上着を変にくつろいで斜めに構えた、いかにもエラソーにしている写真をよく使っている。普通に撮った写真だってあるだろうに。


 昨日、テレビのニュースショーを見ていたら、ある番組がわざわざ守屋氏の生い立ちにまでさかのぼっていた。


 地方の名門の生まれだそうで、それはいいのだが、小学生時代、栗を拾って学校の火鉢に放り込んだら弾けて部屋中灰だらけになった、などという実にどうでもいいエピソードを紹介した後で、「名門の子どもらしからぬところがあった」。


 あのねえ。
 呆れました。いや、ホント。


 でまあ、まだ傍証くらいしか出ていないのに、マスコミではもう、守屋氏が接待の見返りとして省(当時は庁か)に何か買わせたに違いない、と決めつけてかかっている。


 実際、どうだったかなんて、もちろん、わたしにはわからない。興味もない。ついでに言えば、大して税金も払っていない。ま、いざというときは国防のほう、ヨロシク頼むよ、ワッハッハ、てなもんだ。


 しかし、マスコミの書く筋書きとは別の可能性を追究してみることも、一興だと思うのだ。


 守屋氏、200回以上のゴルフ接待を受けたというけれども、実は、接待したくてたまらなくなるくらい愉快な人物なのではなかろうか。この人と一緒にゴルフをやると、楽しくて楽しくて、もう毎週のようにラウンドしたくてしょうがなくなるのだ。


 えーと、毎度言うように、これ、風刺のつもりで書いているんじゃないよ。
 冗談(と思われるもの)を使って何かを叩き溜飲を下げる、なんていう新聞のコラムや川柳コーナーみたいな品の下ったことを、わたしはやりたくない。


 で、守屋氏だが、芸もあり、洒落っ気もあって、一緒にいると愉快でしょうがない。
 ただそこにいるだけでも、ふわーっとこう、まわりの人達をいい心持ちにする。昔の志ん朝師匠みたいな感じ。「フンとに(本当に)もう」、なんて。


 何しろ、防衛事務次官を異例の4年間務めた人物だ。防衛省内に知らないことはない。
 歴代防衛庁(省)長官のちょっとしたエピソードを語るだけで周囲は大爆笑。PKOから帰る機内で腰ミノつけて踊り出した幕僚長の話やら、演習中に富士の樹海で迷子になり携帯電話で連絡してきた部隊の話やら、ハテはインド洋上における各国海軍対抗大女装大会の話まで、その磨き抜いたセンスと話術で、客をつかんで離さない。


 で、商社の偉い人としても、事務次官の接待なら、会社への名分も立つ。守屋氏の、えも言われぬ魅力に惹かれて、ついついゴルフや宴会の回数を重ねてしまった、と、そうは考えられないか。
 まあ、厳密には会社のお金の使い込みにあたるのかもしれないが、それはあくまで商社内の問題である。


 どうだ。今のところは証明もできないが、反証もできまい。


 マスコミのミナサンよ。悔しかったら、かかってこい。
 逃げ出す用意はいつだってできてるぜ。

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「今日の嘘八百」


嘘五百七十六 混乱した興毅選手が、今度は守屋家の代表として記者会見を行うと言い出したらしい。