台無しの気分

 映画は――といっても、もっぱらDVDだが、割によく見る時期ととんと見なくなる時期があって、平均すると、週に2本くらい見ているだろうか。

 映画の特にオープニングの雰囲気が好きで、さて、これからどんな映画を見せてくれるのだろう、とちょっと特別な気分になる。野球のプレイボールやサッカーのキックオフの瞬間にちょっと似ている。

 しかし、特に洋画で、台無しの気分を味わうときがある。

 例えば、(内容は今、テキトーに作るのだが)映画会社のタイトルが出て、砂漠に風がびゅーというような思わせぶりの光景が映った後、タイトルバックに移る。ホーンセクションばりばりのノリのいい音楽なんかだとわくわくする。さあ、始まるぞ、という感じである。音楽が終わり、いかにもヤンキーの兄ちゃん(もちろん、アメリカのヤンキーである。日本のそれではない)がオープンカーを運転している。仲間を見つけたのか、クルマを止め、ひょいと手をあげて、日本語で言う

「よう、マイケル」

 この台無しの間抜けな気分、わかるだろうか。

 どういうわけだか、DVDの初期設定が日本語吹き替えになっている場合があるのだ。それまでの時間を無駄にしたような気になる。

 そういうとき、たいていは英語の音声に切り替え、最初から見直すことにしている。失った時間は取り戻せないが、せめて少しは吹き替えの間抜けさを上書きしたいのである。