昨日、ここに「アル・ヤンコヴィック」と書いたついでに、つらつらYouTubeを見ていたら、アル・ヤンコヴィックがニルヴァーナの“Smells Like Teen Spirit”のパロディをやったムービーがあった。
これが馬鹿馬鹿しくも素敵なのだ。
わたしは、ニルヴァーナとは縁がなく、あまりよく知らない。
ニルヴァーナが有名になった90年代初頭には、すでに腐った大人になっていたし、その前は腐ったセーショーネンで、その前は腐った幼児で、その前は性根の腐った赤ちゃんだったから、仕方がないのだ。
それでも“Smells Like Teen Spirit”は知っている。おそらく、ニルヴァーナの最大のヒット曲なのではないか。
荒々しく、ナイーブで、しかもメロディはポップで、熱き血潮の10代の人々の心をつかむ要素が揃った曲だと思う。
タイトルを訳すと「10代のスピリットのにおいがする」。当時、Teen Spiritという名のデオドラントがあって(今もある?)、それも引っかけているらしい。
原曲“Smells Like Teen Spirit”のほうのプロモーション・ムービーはこれ。
アル・ヤンコヴィック(アメリカでは正しくはウィアード・アル・ヤンコヴィック)のほうのタイトルは、“Smells Like Nirvana”。「ニルヴァーナの臭いがする」。
ニルヴァーナっぽくやってみた、というような意味だが、いつも汚い格好をしているニルヴァーナは何やら臭いそうでもあり、上手いタイトルだ。
ムービーは下のリンク先。
ブログに埋め込めないようになっているので、ご面倒だが、クリックしてご覧いただきたい。
よい。
パロディというのはさらっとやるか、徹底してやるかの、どちらかがいいと思っているのだが、これは徹底してやっている。
ニルヴァーナのPVと同じセット、同じ役者、同じカメラワーク、エキストラまでほぼ同じ人々を揃えたという。
いかにもそれっぽく扮したアル・ヤンコヴィックや、小ネタのひとつひとつを見るだけでも笑えるが、ニルヴァーナの原曲と引き比べると、さらに笑える。
歌詞も秀逸で、のっけから、「この歌、いったい何歌ってんだ? 歌詞のわけがわかんねえ」。
実際、ニルヴァーナの“Smells Like Teen Spirit”の歌詞は、冒頭から“Now load up on guns. Bring your friends. It's fun to lose and to pretend.”と、わかったような、わからないような、だ。
その後も、ずーっと「歌詞がわからねえ」と原曲を茶化し続ける。
サビの前の“Hello, hello, hello, how low?”(やあ、やあ、やあ、どんだけひどい状態?)という、おそらく、ナイーブな10代の人々の心を鷲づかみにしたであろう歌詞のところは、“Don't know, don't know, don't know, oh no.”(わかんねえ、わかんねえ、わかんねえ、ああ、わかんねえ)。
でもって、一気の激情で解放感を生むサビのところは、“Now I'm mumblin' and I'm screamin'. And I don't know what I'm singin'.”(おれ、今、もぐもぐやってる! 叫んでる! でもって、自分で何歌ってんだかわかんねえ!)。
その後も、「やかましくて耳から血が出そうだけど、まだ何歌ってんのかわかんないんだ!」、「おれら、うるさくて支離滅裂なんだ!」、「次の歌詞忘れちまった。歌詞カードが見つからねえ!」、「おれ、どんなメッセージ届けてんだ? おれが何言ってんだか、教えてくれ!」とか、原曲のワケワカンナサを、荒削りなサウンドに乗せて歌い上げる。
そして、最後は、「サヨナラ、サヨナラ、アヨナワ、ハヨナワ、ハヨナヤ、ヨディナヤ、ヤリヤラ、ヤイヤアアア、アヒャアアアアア!」と意味不明に絶叫して終わる。
恐るべき作品である。
歌詞を見ながら聴くと、いっそう笑えると思う。
→ Weird Al Yankovic | Smells Like Nirvana lyrics
ニルヴァーナのファンは、こういうムービーを見ると、冒涜されたように感じて怒りを覚えるのだろうか。
おれは腐った大人だから、こういうのが好きだ。
ニルヴァーナの故カート・コバーンは、「アルは天才だ」と言ったそうだ。
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