オレの前に立つんじゃない

 何度か書いた覚えがあるが、列に並ぶということが嫌いでしょうがない。


 まあ、並ぶのが好きで好きでたまらないという人はそうはいないだろうが、並んでいると自分でもちょっとどうしたのだろうかと思うくらいイラ立つ。


 レジや入場の列に並ばざるを得なくなったときには、イライライライライライラ、ほとんど痙攣を起こしているような状態である。
「オレは(旧)ソ連邦で肉を買おうってンじゃないんだ!!」と思う。


 カウンターでオーダーするタイプのカフェテリアやファーストフード店で、よく、後ろに列ができているのに、平気でメニューを見て迷っている馬鹿がいる。
 かなりの確率で若い娘で(娘はたいてい若いが)、隣でニヤケている馬鹿男にしなだれながら、「えーっとぉー」などと安い恋のテクニックを使いやがる。


「カーッ、ちきしょう!! 何注文するかくらい、先に決めとけ、馬鹿女!!」
 と、瞋恚という言葉はこういう状態を表現するためにあるのかと思うくらい、イラ立ち、腹が立つ。


 そやつがようよう注文し、金を払おうとした拍子に小銭をチャリンと落っことそうものなら、かがんだケツを後ろから蹴飛ばしてやろうか、と思う。


 ただ、残念ながら、圧倒的に実力が足りないので、「思う」だけである。


 そんな具合だから、いくらうまい店でも、並んでまでラーメンを食おうとは思わない。
 うまいが並んでいるラーメン屋の隣に、まずくてガラガラのラーメン屋があったら、そっちに入る。


 ――なるほど、ラーメン屋が二軒並んでいて不思議に思うことがあったのだが、そういう客をゲットする作戦だったのか。コバンザメ方式と呼ぶべきか。


 自分では、世の平均と比べて必ずしも怒りっぽいわけではないと思うのだが、なぜか前をふさがれると異様にコーフンするようである。


 狭い歩道で、横に並んでだらだら歩いているワカゾーやオバハン達に前を阻まれるのも、たいそう腹が立つ。
 そやつらが高校生や大学生くらいだと、「燃えよドラゴン」のブルース・リーを思い浮かべて、「ああ、回し蹴りを食らわしてやれたら」と思う。


 オバハンはさすがに回し蹴りしようとは思わないが(フェミニストなのである。嘘である)、「なぜにこの人らはこうも周囲に無頓着でいられるのであろうか?」などと、人類の共存条件について深く考える。


 ナニ、公憤を覚えているように見せかけて、その実、自分の行く手をふさがれているということが我慢できないだけなのだが。


 関西で言うイラチというやつであろうか。とにかくイラ立ってしょうがない。


 オレの前でメニューを迷っている馬鹿女よ。横列でだらだら歩くワカゾー&オバハンどもよ。
 オレがゴルゴでなくてよかったな。