ここで言う「センスのよい」とは、メロディやハーモニーが美しいということではない。
わたしは世の中に神経を逆なでするような電子音が多すぎると感じている。
家の中では、電子レンジや洗濯機が「終わった、終わった。取りに来い、取りに来い」とピーピーうるさい電子音をたてる。
「うっせえな」と、まるで反抗期の中高生のような気になって、飛び蹴りをかましたくなるのだが、蹴ってもこちらが痛い目を見るだけなので、じっと我慢の反抗期なのだった(エラいぞ、オレ)。
朝、目覚ましがピピピピ鳴るときは、殺意すら覚えるのだが、これにはまあ、別の理由もある。
道を歩けば、信号機が誘導用のメロディを電子音で鳴らす。
電子レンジにしろ、信号機にしろ、注意を喚起するために高い音程でわざと耳につく電子音を使っているのだろう。
それはわかるのだが、やはり、神経に障る。
JR東日本は、駅のベルに「♪ポパポパポパパ〜ン」などという短いフレーズを使っている。
電子音の中では穏やかなほうで、注意は喚起するけれども、あまり刺激を強くして駆け込み乗車を誘わないよう、ギリギリの線をついているのだと思う。
あれはなかなか思慮のある電子音だと思うが、同じJR一家の上越新幹線に乗ると、「♪ド〜ミラ〜ファ〜シドラ〜ン、シ〜ドラ〜ファ〜ミ〜ン」などと音頭調のフザケた電子音の後で車掌のアナウンスが入る。
出会い頭にいきなり舌で顔をペロリンと舐められたような不快な気になる。
いつか通路を歩く車掌の足をひっかけてやろうと思っているのだが、まだ実行したことがない。