猫の幽霊の話を読んだ。
化け猫とはまた違うそうだ。化けるのは同じなのに、ややこしい。
交通事故で死んだ飼い猫が、夜中に飼い主を悲しそうな目でじっと見ている。それだけの話なのだが、足がないのだという。
動物の幽霊というのは今まで考えたことがなかったので、意表を突かれた。
まあ、猫というのは、動物の中でもいかにも幽霊になりそうである。この世に恨みや思いを残しやすい印象がある。
その点、犬は気性がさっぱりしているというか、死んでもあっさりしている。
「キャンキャンキャンキャン!」
(バコン)
「クーン……」
で、おしまいだ。
動物の墓場なんていうのが、たぶんどこかにあるのだろうけど(ペットの墓場とかね)、夜中の丑三つ時には、凄いことになっているのかもしれない。
猫の幽霊、牛の幽霊、象の幽霊、ライオンの幽霊、鹿の幽霊、鼠の幽霊、フタコブラクダの幽霊、モグラの幽霊、イボイノシシの幽霊……そんなのがそこらへんをふわーっと飛び回っていて、しかも足がない。
胴体に首と尻尾がついているだけの動物達がふわふわ漂っているのだ。
怖いと言えば、怖いが、例えば、足のない馬の幽霊を想像してみると、子どもの工作の失敗作みたいで、間抜けである。
ミツユビナマケモノの幽霊は、四肢のない姿で、やっぱり仰向けになって、ぼんやり漂っているのだろうか。
蛇の幽霊、ミミズの幽霊はどうなるのか。ムカデの幽霊なんて、幽霊でいるほうが無念であろう。
タコやイカ、カニの幽霊というのも、出会ったら、なんだか、お互い、気まずい思いをしそうである。