先週の休み、家の前の通りは電柱づたいに提灯が列となっていた。秋祭りであるらしい。
おれは「戦火の馬」というDVDを借りて、家に帰った。週末に酒を飲みながら家で映画を見るのが習慣である。
「戦火の馬」は第一次世界大戦の軍馬の運命を扱ったスピルバーグ監督の大作であるという。いつものようにカーテンを閉め、電気を消して見始めた。
物語はイギリスの老いた小作農が農耕馬の代わりに若いサラブレッドを買うところから始まる。気性の荒い馬で、言うことを聞かない。しかし、小作農の息子の献身的な努力に若馬は次第に心を開き、荒地を耕し始める。
突然、現実世界から音が盛大に闖入した。
♪ドンドンドン、タカラッタ、ドドンドドン。「〽️ハァ〜」
秋祭りのスピーカーが鳴らす音頭である。破壊的である。
ヘッドホンを差して映画を見直すことにしたが、セリフの合間、合間や、オーケストラの感動的な音楽が途切れるたびに「〽️ハァ〜」が入り込んでくる。
以前から最強(最凶)の音楽は音頭とポルカだと思っている。あらゆるものを瞬時にして破壊し、ナシにしてしまうという点で、音頭とポルカは水爆と同じ性質を持っている。
そして、おれは萎えた。戦火の馬は戦場に出る前に消えた。