二大キーワード

 村上春樹がまだ若手作家だった頃、確か、エッセイに「30代になると、『そういうものだ』と『それがどうした』が二大キーワードになる」というようなことを書いていた。たいていのことは、その2つで乗り切れるようになる、と。


 ただし、うろ覚えなので、表現は違っているかもしれない。


 そのエッセイを読んだ頃、わたしは20歳くらいだったので、ふーん、とは思いつつも実感はなかった。


 今は、「そういうものだ」、「それがどうした」という感覚、とてもよくわかる。


 ところが、ここ数年、わたしはますます馬鹿になっているらしく、自分にとっての二大キーワードはさらに進化(か退化か知らないが)した。


「ヤんなっちゃうネー」と「しょうがねーなー」がそれだ。


 自分についてのあれやこれやは、たいてい、「ヤんなっちゃうネー」で処理できる。他の人や世の中のことは、「しょうがねーなー」で済ませられる。


 ええ。はい。その通り。稲本喜則、四十歳。今年は本厄。日々、ゴマカシ、ゴマカシ、生きております。


 まあ、成功のための二十五の法則というタイプの人とか、社会の役に立とう、発展のために尽くそうと決心した人とかは、そういう態度ではいかんのだろうけれども。
 アタシは、やる気というものをどんどん後方に忘れてきてしまっているので、いかんともしがたいのだ。ヤんなっちゃうネー。


 この二大キーワード、なかなか便利だし、第一、疲れずに済むので、よければお試しあれ。


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「今日の嘘八百」


嘘四百七十一 人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場に忘れてきてしまいました。