昨日、佐賀県について書いた。きっかけは、こんな新聞広告を見たからだった。
「佐賀を撮る、佐賀で創る。アジアのハリウッド構想」
最初、私はちょっと勘違いをした。
佐賀に、映画スタジオを誘致するのかと思ったのだ。
筑紫山地の一角に、あの有名な「HOLLYWOOD」という巨大文字看板のように、「SAGAKEN」と、どーんと記してある風景を想像した。
そして、どこかにビバリーヒルズのような高級住宅地を造成し、日本の映画スター、織田裕二とか、役所広司とか、吉永小百合とか、田中裕子とか、高倉健とか、麻生久美子とか、浅野忠信とか、大竹しのぶとか、妻夫木聡とか、小雪とか、小西真奈美とか、菅原文太とか、みーんな、佐賀県に住むことになるのか、とそんなことを考えた。
しかし、どうやら、ちょっと違うらしい。
佐賀県が目指しているのは、主にデジタルコンテンツ産業の誘致らしい。新聞広告によれば、100年前にハリウッドが映画産業を集積し始めたように、佐賀にデジタルコンテンツ産業を集積したい、と、そういうことのようだ。
今はまだ手探りの段階で、佐賀県にデジタルコンテンツ産業を集積するには、どんな条件が必要か、一般から意見を募っている。
で、意見を寄せてくれた人には、抽選でこんなプレゼントが用意されている。
「いかしゅうまい」
素敵だ。
いや、皮肉ではないよ。私はこういう感覚、好きだ。
わけのわからないキャラクターグッズだの、特製マウスだのを贈るより、はるかにいい。プロジェクトを進めている人々の手のぬくもりが感じられる。まあ、あんまりぬくもられすぎても、困るのだが。
しかし、いかしゅうまいが欲しくて応募した人の、佐賀県デジタルコンテンツ産業誘致についての意見って、どんなのだろう?
そのうえ、当選者の人数は「35名」。この中途半端な数が、また、いい。
もう少し奮発して50名にできなかったのか。あるいは、ちょっと減らして30名にしても、効果はさほど変わらなかったのではないか――しかし、一方で、この「35名」という数字に、私はリアルさを感じるのだ。
きっと、もろもろ計算して、使える予算が35名分だったのだろう。仕事が、妙な部分できっちりしている。
新聞広告に載っていた意見応募先は、ハガキ、FAX、E-mail。
デジタルコンテンツ云々と言っているんだから、せめて構想についてのウェブサイトくらいつくっておいたらどうか。
しかも、広告の担当部署はこうなっている。
「佐賀県統轄本部危機管理・広報課」
「アジアのハリウッド構想」に対して、「統轄本部危機管理・広報課」。凄く違和感がある。
佐賀は今、危機意識を抱いているのだろうか。そして、それを打破するには「アジアのハリウッド構想しかない」ということになったのか。そんな深読みをしてしまう。
まあ、実際には、単に新聞広告だから広報課の担当になったのだろう(構想自体の担当部署は別のようです)。
危機管理と広報が結びついているところが、いかにも県庁っぽいなあ、と思う。
つまりですね、広報の第一の役割は危機管理にあるのですよ、少なくとも、佐賀県庁では。佐賀県のアピールが第一の任務ではないのです。
確かに、地震や津波、山火事のとき、広報が大切ではある。
佐賀県庁にひとつだけ忠告しておくなら、こういう構想を食い物にする手合いがいるから、ひっかからないように気をつけてくださいね。
この手の構想を打ち上げると、専門家ヅラして、イベントだの、中途半端な有名人を集めた会議だのをやって、それっぽい企画書まとめて、コンサルタント料を取ったら、ハイ、サヨナラ。後にはほとんど何も残らない、なんていうケースが多々ありますから。