キング〇〇〇

 映画「レヴェナント」を見た。

 

 

  冒頭でディカプリオ演じる猟師が巨大なヘラジカを撃つシーンがある。それを見て、ふとキングコングのことを思った。よくわからない連想だが、おれの頭の中は乱反射しているから仕方がない。

キングコング」はご存知の通り、巨大なゴリラがニューヨークで暴れまわる映画である。何度となく映画化されている。それだけ魅力的なキャラクターであり、魅力的な設定なのだろう。

「レヴェナント」を見ながら、あのニューヨークで暴れる巨獣がもしヘラジカだったらどうだろうか、と考えた。観客は何かこう、困るのではなかろうか。「いやまあ、暴れるのは勝手ですが・・・」と、大概の人が不得要領を絵にしたような顔をすると思う。

 なぜゴリラだと受け入れることができ、ヘラジカだと困るのだろうか。ヘラジカは人間から遠く、知性があまり感じられないからか(ヘラジカに失礼だが)。それでは、巨大な犬、たとえば巨大なマルチーズがニューヨークで暴れて、エンパイアステートビルをキャインキャインと駆け上ったらどうか。やはり観客は困るだろう。マルチーズが可愛いすぎるというなら、シェパードでも柴犬でもボルゾイでもいい。やはり困ると思う。四つ足の動物は基本、ふさわしくないのだ、コング的な存在として。

 そう考えると、巨大な「ゴリラ」をキングコングに設定したのは絶妙だと思う。感情が人間に近い。強い。二本足で立つ強い動物ということなら熊も考えられるが、感情移入できる度合いでゴリラにはかなわない。

 などとバカなことを考えているうちに「レヴェナント」はあれよあれよと話が進んだ。テーマが復讐という救いのない映画で、実際、ラストまでほとんど救いはなかったがいい映画だった。しかし、おれは頭の片隅で、キングコングチンパンジーだったら、オランウータンだったら、などと考えているのであった。救いがないのはおれの頭かもしれない。