油断している人々

 街を歩いていると油断している人に随分と出くわす。

 一番わかりやすいのが歩きながらスマホを見ている人で、何をそんなに夢中になっているのであろうか? と不思議に思うのだが、かなりいる。ああいうのは自分は人やクルマにぶつからないと信じているというか、そんなことすら思わないのであろう。まあ、はっきり言って、間抜けに見える。

 もっとひどいのが、スマホを見ながら自転車に乗っている人で、これはもう、馬鹿と読んでさしつかえないと思う。観察していると、時折、スマホから目を話して前方を確認したりするのだが、またスマホに目を戻す。その間に自転車が進む距離は3mから5m。十分に人や犬猫が出てきて轢く距離である。

 自転車というのは、どうも歩いている延長と誤解する節があって、それで歩きスマホの延長で自転車スマホとなるのであろうか。歩きスマホも間抜けでみっともないけれど、自転車スマホは間抜けなうえにものすごく危ない。自分が怪我するのは知らんがなというところがあるが、人を巻き込むのが迷惑である。

 そういえば、何年か前に、自転車でコーヒー片手にイヤホンしながらスマホを見ていて、老婆にぶつかり、死なせてしまった若い女性がいた。油断も甚だしいが、もちろんそんなひどいことを自分が起こすとは思ってもいなかったのだろう。人を殺したという事実は一生残り、本人もずっとさいなまれると思う。

 間抜けと馬鹿が人を殺すこともある。間抜けに見える、馬鹿に見える、というだけならまだいいのだが。